日台連携で半導体の設計・開発分野を強化
半導体産業の発展において、日本と台湾は古くから協力関係にある。日本国内での最先端半導体製造を実現させるためにも、今後ますます日台の連携が重要となる。半導体製造装置・材料技術で強みを持つ日本と半導体製造技術をリードする台湾。今後、重要となる半導体の設計・開発分野に対し、日台連携の推進と政府による支援を通じて、さらなる強化を図る。 90年代にパソコン製造でビジネスモデルを確立 日本と台湾の連携は、パソコンなどのICT機器の製造で先行した過去がある。1990年代に、日本のパソコンメーカーが設計した製品を台湾のEMS(Electronics Manufacturing Service=電子機器の製造受託)企業によって組み立てるビジネスモデルが確立された。その後、パソコンのみならず液晶ディスプレーなどの製造でも連携が進む中、半導体産業においても変化が見られるようになってきた。従来の設計・開発から製造、販売まで全て1社で行う垂直統合型から水平分業型へとビジネスモデルが移行。半導体の製造に特化したファウンドリー企業が生まれ、現在の半導体産業におけるサプライチェーンが構築されていった。 台湾の国家科学及技術委員会の蘇振綱副主任委員(日本の副大臣に相当)は「日本と台湾は相互補完関係にある。日本の持つ優れた半導体製造装置と材料技術と台湾の高い製造技術が組み合わされることで、最先端の半導体を生み出すことができる。技術連携を深めるために日本企業も台湾のサイエンスパークに進出し、今日のエコシステムが形成された。今後も日台の企業が協力し、エコシステムをさらに発展させていくことが重要」と話す。 IC TAIWAN GRAND CHALLENGEを開催 半導体の製造技術でリードする台湾だが、課題もあると蘇副主任委員は話す。それが半導体製造の上流にあたる設計・開発の分野だ。台湾にも半導体の設計・開発を担うデザインハウスは存在するものの、企業数も規模もまだまだ小さい。今後、設計・開発分野を強化していくためにも海外企業を台湾に呼び込み、連携することで台湾における設計・開発分野が成長していくと考えている。 台湾政府は各省庁が協力し、ICデザインおよびAI(人工知能)をはじめとする最新アプリケーション開発を支援するピッチコンテスト「IC TAIWAN GRAND CHALLENGE」を実施する。全世界のスタートアップ企業を対象に公募し、厳正なる審査を経て選出された企業には、賞金3万米ドルのほか、メンターによる指導、TSMCなど台湾を代表する企業との連携などが可能となる。「台湾を代表する半導体関連企業のメンターが指導を行い、試作から量産まで台湾企業の製造プラットフォームを活用できるのが大きな特徴」(蘇副主任委員)とし、他のベンチャー支援コンテストとの違いを強調する。 ピッチコンテストで募集するのは、半導体チップの設計・製造と①スマートデータ&AI②スマートモビリティー③スマートマニュファクチャリング④スマートメドテック⑤持続可能性――の応用アプリケーションで台湾企業との連携を目指す企業。審査基準は、①台湾で活用できるソリューション②新しい価値を創造するソリューション③革新的な技術を有していること――の3点となる。 今年9月から公募はオンラインで開始しており、2025年1月31日が締め切り。受賞チームは25年5月15日に開催される授賞式に出席し、5月20~23日に台湾で開催される「COMPUTEX台北」および「InnoVEX」に出展する。 設計・開発分野の支援は未来につながる 蘇副主任委員は「ICの設計とその応用分野を支援することは、半導体産業の未来につながる。設計・開発の力が新たな産業を生み出し、新市場を形成していく。新しい工場を誘致するよりも大きなメリットをもたらすと考えている。グランドチャレンジを通じて日台はもとより、世界中の国々と連携し、新たな技術革新を起こしたい」と話す。