全国初摘発の「電動スーツケース」より要注意…LUUPの座席付き「電動シートボード」に恐怖を感じる理由
■電動スーツケースは一発で違法 このところ、もう連続ドラマのように目の前の路上で、いろんなことが展開していく。大阪市内の歩道で、またがって運転できる「電動スーツケース」を無免許で走ったとして、中国籍の30代女性が道路交通法違反で書類送検された。全国初の事例だそうだ。 【写真】街中を走るLUUP。ヘルメット装着している人はほぼ皆無 この電動スーツケースの最高速度は10キロ台で、原動機付自転車(原付)として扱われるため、無免許・無ナンバーで公道を走っただけで違法となるのだ。 これは分かりやすいので警察も検挙しやすい。私が電動スーツケース以上に危惧しているのが、「電動シートボード」だ。 何のこと? 名前で分かるわけはないかもしれない。私が、この連載で「違法」「脱法」と分類した3つ目の「合法電ジャラス自転車」というやつで、以前から一番危惧していたものだ。 ---------- 【分類① 違法電ジャラス自転車】 スロットルあり、「フル電動」あるいは「モペッド」 【分類② 脱法電ジャラス自転車】 スロットルなし、アシスト率オーバー・電アシもどき 【分類③ 合法電ジャラス自転車】 なぜか合法の「特定小型原動機付自転車」 ---------- ついにラスボスが、最大手LUUPのバッジを着けてやってくる。 ■スクーターのように見えて無免許OK まずは画像を見ていただきたい。 これ、何に見えるだろうか? どう見ても、ただのスクーターだろう。そう、昭和のラッタッタみたい。 でも、スクーター(原付)じゃない。これ、無免許OK、ノーヘルOK(罰則なし)、場合によっては(「特例」がつくと)歩道もOKなのだ。 信じられるだろうか?
■座席付きの「電動サイクル」はすでにあった この話、ちょっと前の電動キックボードからスタートする。 電動キックが「(特例)特定小型原動機付自転車」という新カテゴリーに指定されたのが、2023年の7月。そのときから(声高には言われなかったけれど)電動キックにサドルがついていてもOKとされていた。 だから「最初から取り外し不可のサドル付き」というやつは存在した。これを当初「電動サイクル」といった。レギュレーションはこうだ。 ---------- ・時速20キロ以下(歩道は時速6キロ以下) ・最大出力は600W(電動アシスト自転車の約3倍) ・16歳以上、免許不要 ・ヘルメットは努力義務(罰則なし) ---------- というところ。電動キックとまったく同じだ。 ■電動キックは快適に乗れるとは言い難い 私も試乗で乗ってみたことがあるが、たしかに楽しい、楽ちんだ。 だから同時にこうも思ったのだ。 「でも、これ、絶対に流行るだろうな、電動キックに置き換わるかもしれないな」 なぜなら電動キックボードの方は次のようなディスアドバンテージを持っているから。 ---------- ・立ちっぱなしで疲れる ・案外、小回りがきかない ・下り坂が苦手 ・普段使わない筋肉を使うためか(翌日)筋肉痛 ←たぶんこれが乗る人が若い人ばかりの理由 ・重心が高いために(特に低速で)ふらつく ・あまりに小径で段差が苦手 ---------- 結果として、電動キックはあまり長い時間乗っていられない、ということになった。 でも、そこにサドルが着いて座って移動できるとしたら? 楽で長く乗れるに決まっている。 これこそが「特例特定小型原動機付自転車」の深慮遠謀で、最初からこのカテゴリー、そういう枠組みで作られていた。 で、満を持して最大手LUUP社がプロトタイプを発表したのが今だ。 電動サイクルではなく「電動シートボード」と新たに名付けられて。