尿酸値が低くても危険なケースも…痛風にならないための生活習慣とは?【医師が解説】
ある日突然足の親指に激痛が走る痛風は、文字通り「風が吹いても痛い」が名前の由来といわれている。患者の9割を30代以上の男性が占める「痛風」とはどんな病気なのか。どういう人がなりやすいのか。痛風の治療法や予防法について専門医に聞いた。(取材・文/フリーライター 楠本知子) 【この記事の画像を見る】 ● 最も多く症状が 現れる箇所は? 「人間の血液中には尿酸という物質があります。尿酸とは、臓器を働かせるエネルギー源であるプリン体が体内で分解される時にできる老廃物のこと。通常は尿とともに体外に排出されますが、これがさまざまな理由で過多状態になると関節にたまり、結晶化して炎症を起こします。これが痛風です」 こう話すのは、東京慈恵会医科大学医学部名誉教授で、痛風・リュウマチ専門医の細谷龍男医師だ。 「最も多く症状が現れるのは足の親指のつけ根です。見た目も真っ赤に腫れて、歩けないほどの激痛が数日から1週間ほど続きます。くるぶしや足の甲、手指などに症状が出ることもあります」 痛みが消えた後、安心して治療せずに放置すると、肘や膝などの大きな関節が痛くなったり、四六時中関節が腫れて痛みを感じる「慢性痛風関節炎」や、骨が破壊され、足の指が変形したり「痛風結節」を起こしたりする人もいる。また、結晶化した尿酸が腎臓にたまって慢性腎臓病や尿路結石が起きやすくなり、腎不全に進行することもある。 さらに、痛風の原因である尿酸値が高い人は、高血圧、高脂血症、心血管障害、脳血管障害などの合併症を起こす人が多いことも分かってきている。
● 圧倒的に男性患者が多いのは ホルモンが原因の一つ 「患者の9割が30代以上の男性です。痛風の患者に男性が圧倒的に多いのはホルモンの関係。女性ホルモンには尿酸を体外に排出する働きがありますが、男性は女性ホルモンが少ないため、体内に尿酸が蓄積されやすく、痛風になりやすいのです」 ただし、女性も閉経後は女性ホルモンが減って血液中の尿酸が増えやすくなるので注意が必要だ。いずれにしろ健康診断や人間ドックで「尿酸値が高めですよ」と言われたら、早めのケアを心がけたい。 「尿酸値が高め」の目安となる数字は血清尿酸値が7.0mg/dlを超える場合だ。「高尿酸血症」と診断される。 「この段階で痛風発作が出ていないようであれば、生活習慣を変えることで改善が可能です。ところが8.0 mg/dlを超えると、いろいろな合併症を起こしやすくなり、常に9.0 mg/dlを超えると薬物治療が必要となります」 尿酸値を下げる薬は大きく分けて2種類ある。体の中で尿酸ができるのを少なくする尿酸生成阻害薬と、腎臓からの尿酸の排泄をよくする尿酸排泄促進薬だ。 「検査をして、尿酸が体の中で多く作られるタイプの人には尿酸生成阻害薬、尿中に出る尿酸の量が少ないタイプの人には尿酸排泄促進薬を処方します」 なお、これらの薬は痛風の発作を起こしている最中には使われない。なぜなら、 発作時に尿酸値を下げる薬を使うと痛みが強くなったり、発作が長引いたりしてしまうからだ。まずは痛みを抑えて、そこから治療をスタートさせる。正常とされる血清尿酸値は7.0 mg/dl未満だ。 ある日突然、痛風の発作に襲われてしまったら、どのように対処したらよいのだろうか。