山梨側リニア工事を3者合意 静岡県、JRの対策評価
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事を巡り、鈴木康友知事は18日、山梨県側から静岡県境までの高速長尺先進ボーリングと先進坑、本坑トンネル工事の実施について山梨県、JR東海の3者で合意したと発表した。静岡県はこれまで水資源への影響を懸念し、山梨県側の県境300メートル区間を含めたボーリング調査の実施を認めてこなかったが、リスク管理が確認されたとして合意に至った。これにより、トンネル工事に向けた調査が進展することになる。 県境付近のボーリングを巡っては、川勝平太前知事が、湧水が県外に流出しかねないとして、県境300メートル区間でボーリングを行う際は水資源の保全策の事前合意が必要とJRに求めていた。水資源への影響を議論する県有識者会議専門部会は5月、JRのボーリング計画は「科学的な観点からリスク管理ができている」と容認の考えを示した。 JRは大井川の流量に影響を与えない方策として、上流域にある田代ダム(静岡市葵区)の取水が停止される2025年11月までの設備改良工事期間を利用し、ボーリングを実施する案を提示していた。流域市町も、取水停止中は流量が増加することから、県外流出する湧水の返還は必要ないとの考えを表明していた。 鈴木知事は18日に県庁で開いた記者会見で、「取水停止により健全な水循環が保たれる」と認め、「静岡県が抱いていた懸念を解消できる」と合意内容を評価した。一方、静岡県内でのボーリング実施は「県境に達するまでに、大井川利水関係協議会の意向も確認した上で判断する」との認識を示した。 3者の合意事項として、山梨県側の掘削工事などにより大井川の水量が減少する可能性も想定し、「健全な水循環の回復措置は必要」と明記。山梨県への流出量の推定作業は同県側の工事と並行して進めるとした。 ボーリングは15日時点で、県境まで339メートルの地点まで進んでいる。JRは合意を受け、「静岡県内の地質や湧水の状況を把握することが流域関係者の不安解消につながる。早期に県境を越えて静岡県内でもボーリング調査を実施したい」とコメントした。
静岡新聞社