てんかん発作の「交通事故」後絶たず! 過去には児童6人死亡の大事故、個人モラルに依存した制度設計はもはや限界だ
限界を迎える制度設計
冒頭、高校生ら9人をはねる交通事故を起こした派遣社員の男性は、運転免許証の質問票の虚偽記載について、 「運転免許証がなくなると車の運転ができなくなるから」 と述べている。たしかに、仕事や日常生活に支障が出るのはよく理解できる。しかし、免許を更新した2か月後に彼は事故を起こし、車は廃車になった。交通事故を起こす危険性を認識していたことは間違いないだろう。やはり制度設計の再考が必要である。 てんかんの支援団体などの意見を参考にすることも大切だが、まずは相談しやすい環境を整えることが何よりも重要だ。大病院で月1回でも、運転免許に関する“よろず相談会”を開くなどして、関連診療科の医師と接点を持てれば、相談しやすくなるだろう。 ただし、患者との信頼関係や医師による届け出制度の周知が懸念され、通院治療が阻害されることのないよう配慮が必要である。また、公共の福祉(事故防止)の観点から運転が制限される場合には、代替移動手段への配慮が必要である。 病気の可能性は誰にでもあるのだから、病名による差別は慎むべきだし、それは私たち全員の利益になる。一方、 「モラルに頼った制度設計」 には限界があり、交通行政と医療の連携による事故防止が望まれる。
伊波幸人(自動車ライター)