「日の丸家電」に冬の時代、縮小市場でのシェア争奪戦はどこまで続く?
分断・多極化する世界で、新しい視界を開くことができるか。日本が向かうべき道とは――。『週刊東洋経済』2024年12月28日・2025年1月4日合併特大号の第1特集は「2025年大予測」だ。株式・マネーから日本の政治経済、世界情勢、産業・企業動向、そしてスポーツ・エンタメまで。2025年の注目テーマを徹底解説する。 【図解】冷蔵庫と洗濯機の出荷台数はこんなに減っていた!? 「冷蔵庫・洗濯機の需要が人口や世帯数の減少を上回るペースで縮小しており、どこまでこの低迷が続くかわからない」
日立製作所の家電事業会社、日立グローバルライフソリューションズ(GLS)の豊島久則常務は危機感を隠さない。コロナ禍の巣ごもり特需が過ぎ去った今、白物家電の市場に“冬の時代”が到来している。 国内家電最大手のパナソニックも苦戦を強いられている。2024年度上期の家電事業部門の調整後営業利益は前年同期比で3割超低下した。 中国市場の不調が最大の原因だが、円安や部材の高騰、商品入れ替え時の販促費などで、国内家電事業も前期比で減益だった。「下期には合理化や新製品で増益に転じる」(パナソニックの品田正弘社長)というが、先行きはまだ不透明だ。
■出荷台数は1990年の半分に そもそも冷蔵庫と洗濯機の出荷台数は過去30年以上おおむね右肩下がりだ。それでも各社が事業を維持してこられたのは、製品の単価を引き上げてきたからだ。 2009年に14万円だった全自動洗濯乾燥機は2023年に30万円、冷蔵庫も15万円から25万円まで値上がりした(総務省「小売物価統計調査」東京都23区のデータ)。 だが「これ以上価格を引き上げるのは難しい」(国内メーカー幹部)。中国メーカーと組んだ異業種の参入が本格化しているからだ。
家具量販大手のニトリは11月に9.99万円と格安のドラム式洗濯乾燥機を発売。家電量販大手のヤマダホールディングスやエディオンも中国メーカーと連携した独自製品を積極展開している。 ■合理化で生き残れるか 2025年は、縮小市場の中でシェアを奪い合う戦いにおいてどこまで食い下がれるのかのターニングポイントとなりそうだ。そのため、各メーカーは今後予想される価格競争の激化に備える。 パナソニックは新型のオーブンレンジや冷蔵庫で従来品比20%の直接材料費削減を達成した。日本、中国、その他アジアの共通モデルとすることで部品コストを下げたほか、機能も絞り込んだ。
日立GLSは生産工程の徹底した自動化を進めている。従来は人間しかできなかった冷蔵庫に引き出しを取り付ける作業や、隙間を樹脂で埋める作業を自動化した。 各メーカーは、こうした製造過程の合理化を一段と加速させることになるだろう。 【注目の株価材料】業界再編がM&Aに発展 2016年に東芝が家電事業を中国の美的集団に売却したように、家電事業の業績改善が進まなければ事業売却や合従連衡が進む可能性がある
梅垣 勇人 :東洋経済 記者