実はバナナ生産世界一、皿や服飾品にも インドの重要商品、気候変動の影響懸念
世界最大のバナナ生産大国インドではバナナの葉も重要な商品だ。特に南部や西部では皿代わりになり、葉の繊維が服飾品などの原材料として使われることもある。ただ最近は、取引が暑さや水不足など気候の変化に影響を受けている。(共同通信=角田隆一) 南部チェンナイ最大のコヤンベドゥ青物市場の入り口付近にはバナナの葉の専門店が10店ほど集まる。朝早くから店主は店先に座りながら長さ1メートル以上の葉っぱを割いたり、ナイフで切ったりしている。形を整え、汚れや変色した部分を取り除くためだ。 1枚の葉から大きく取った長さ50センチほどのものは昼食や夕食用の皿代わり。卸売価格で1枚5ルピー(約10円)だ。同じ葉から小さい部分も軽食用として別売りする。 チェンナイの食堂では、青々とした葉をランチョンマットのように、机にじかに敷く。葉の上に炊いた米をのせ、複数の小皿のカレーやおかずをまぜて食べるのが伝統的な方法だ。食後、葉はそのまま捨てる。
葉を売る店主ジェッビット・ラージさん(40)は「ホテルや飲食店用に数十~数百枚単位で売れる。結婚式が多い日や祭礼の際は、売り上げが伸びる」と話す。地元スーパーでもやや高い値段で家庭用に売られる。 国連食糧農業機関(FAO)によると、インドは世界1位のバナナ生産国だ。葉は国内利用がほとんどとみられるが、主要産地の南部や西部では農家の貴重な収入源だ。現地企業はバナナの葉を原材料にしたマスクや、アパレル製品用の糸を開発する。 ただ別の店主センティル・クマールさん(42)は「10年前に比べ価格が高くなった。仕入れは厳しい」と浮かない顔だ。地元紙ヒンズーは「40度以上の高い気温がバナナの生育に響く」と指摘。葉が黄色く変色し、売り物にならないことも多い。一方で南部ベンガルールでは水不足による水道代の高騰で、皿洗いの水を節約しようと葉の需要が高まり、価格が高くなっているという。