豚コレラに揺れる愛知の養豚業 「現場に行っていませんよね」 見えない脅威に「ピリピリ」
「現場に行っていませんよね」
県内での豚コレラ発生以降、ウイルスの侵入を防ぐため、来訪者の動きにもいつも以上に目を光らせている。今回の取材でも、記者の場内への立ち入りは禁止。豚舎から離れた場所での取材対応となった。さらに、訪れる記者が豚コレラの確認された豚舎付近で取材していないことも念のため確認した。過剰な対応という見方もあるが「ウイルスを持ち込まれたら、すべてが終わってしまうから」と、理解を求めた。 当然だろう。男性にとっての収入源はすべて養豚だ。もしも豚コレラへの感染が確認されれば、家畜伝染病予防法に基づいて、すべて殺処分しなければならない。いくら気をつけても気をつけすぎということはない。男性場長は「問題収束まで、しばらく気が抜けない。もしもうちから出たら、廃業もありえる。再スタートしたとしても、一から始めて感染前の経営状態に戻るまでどのぐらいの時間がかかるのか、全く想像もつかない」と目には見えない脅威への不安を口にし、「一刻も早く豚コレラが消えて欲しい」と撲滅を願った。
◆豚コレラとは…
農林水産省によると、豚コレラは豚コレラウイルスによる豚、イノシシの熱性伝染病で、強い伝染力と高い致死率が特徴。人には感染しない。 豚コレラに感染した豚の肉が市場に出回ることはない。たとえ、感染した豚の肉や内臓を食べても人体に影響はない。 感染拡大を防ぐため、家畜に感染が確認された場合は「家畜伝染病予防法」で、所有者は殺処分しなければならないと定められている。 世界各国に分布しているが、北米、オーストラリア、スウェーデンなどでは、ウイルスの撲滅状態を示す「清浄化」を達成している。 日本国内では、2018年9月、26年ぶりに岐阜県内で感染が確認された。岐阜県以外の養豚場での確認は、今回が初めて。2月11日までに発生が確認されたのは、岐阜県と愛知県、長野県、滋賀県、大阪府の5府県で8例。 12日朝現在、起点となった愛知県豊田市の養豚場と、出荷先の同県田原市、岐阜県、長野県、滋賀県で、殺処分した死骸の埋却などの防疫作業は完了した。大阪府では全頭殺処分が終了している。 消費者庁は、豚コレラはコレラ菌を原因とする人のコレラとは、関係がないとして「根拠のないうわさに混乱しないように」と、正しい情報を得るように注意を呼びかけている。 (斉藤理/MOTIVA)