『君が心をくれたから』で物語の鍵を握る存在に 斎藤工&松本若菜が演じる謎の“案内人”
普段何気なく過ごしている当たり前の日常から五感が失われてしまったら……。それがたとえ大切な人のためだったとしても、平常心ではいられないだろう。『君が心をくれたから』(フジテレビ系)では、主人公の雨(永野芽郁)がそんな“過酷な奇跡”と対峙する。 【写真】『君が心をくれたから』山田裕貴インタビューカット 注目のキャストが切ないラブストーリーを描く中、印象深いのが、あの世からの“案内人”である日下(斎藤工)と千秋(松本若菜)の存在だ。彼らは雨に“過酷な奇跡”を提示した張本人であり、雨と太陽(山田裕貴)にしか見えない不思議な存在。そんなミステリアスなキャラクターを、斉藤と松本は丁寧に表現していく。 日下を演じる斎藤工は出演作品が多いことで知られる俳優だが、やはり多くの視聴者にその存在感を知らしめたのが『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)への出演だろう。斎藤はこの時、主人公の不倫相手となる高校教師の北野裕一郎を演じ、そのセクシーな魅力で多くの視聴者を虜にした。他にも、『アキラとあきら』(WOWOW)では向井理とのダブル主演、『漂着者』(テレビ朝日系)では主演のヘミングウェイを務めたほか、『東京独身男子』(テレビ朝日系)、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』などで作品において重要な役どころを存在感たっぷりに演じてきた。 さらに斎藤は映画監督としての一面も持つ。無類の映画好きである斎藤は数多くの作品を鑑賞してきただけでなく、自らも『ゾッキ』(2021年/竹中直人・山田孝之との共同監督)、『スイート・マイホーム』(2023年)など複数の映画でメガホンを握る(映画監督時は齊藤工名義)。演じることだけでなく、演出することにも長けているのだ。こうして、監督としての視点があるからこそ、芝居でも自分の個性や魅力を十分に引き出せるのだろう。 一方で、日下と行動を共にする千秋を演じるのが松本若菜だ。『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)でデビューし、その後もコンスタントに作品には出続けてきたが、大ブレイクとまではいかず。そんな松本のキャリアの転機となったのが『やんごとなき一族』(フジテレビ系)での美保子役だ。ヒロインの佐都(土屋太鳳)をいびるコミカルで強烈な芝居がSNSを中心に大きく話題となり、毎週松本の活躍を楽しみにする視聴者が急増。「#松本劇場」としてハッシュタグまででき、ドラマ公式SNSも度々美保子にフォーカスしたショート動画を投稿した。ここで松本は大きく飛躍を遂げ、『復讐の未亡人』(テレビ東京系)では主演の座を射止めることになる。 個性的な役を演じることも多い斎藤と松本だが、今回演じる日下と千秋は比較的落ち着いた印象がある。この役では、はじけた芝居や強烈な個性は必要ないが、一方で「案内人」という未知の存在を体現する存在感が必要とされる。ミステリアスで色気のある斎藤は日下という人物の謎めいた魅力を視聴者に的確に伝え、出演時間が長いわけではないものの強いインパクトを与えた。また、松本演じる千秋のほうは、取り付くしまのない日下と対照的に、雨の心に寄り添うそぶりを見せる。日下とはまた違ったアプローチで雨と接していることから、同じ案内人の2人が放つコントラストも見どころとなるだろう。 雨と太陽の物語に注目しがちな本作だが、実は日下と千秋にも気になる謎が複数ある。なぜ2人は行動を共にするのか、なぜ「案内人」をしているのか。こうした謎がこれから明らかになるのかは、ぜひとも注目したいポイントだ。
Nana Numoto