【理系の学力】県民一丸で向上を(1月4日)
輝く新年に、福島県が災厄からの本格的な復興を遂げ、未来に大きく飛躍する夢を描きたい。担い手は子どもたち。学習面に注目すると、小中学生の算数・数学の成績は低迷したままだ。理系の実力は新技術や産業を創出し、地域活性化の礎となる。各種団体や企業が連携を深め、学力を伸ばす取り組みを県民運動的に進めてはどうか。 小学4年生から中学2年生まで計約6万7千人が臨んだ今年度の県教委の「ふくしま学力調査」で、算数・数学は学年が上がるに連れて最下層の学力レベルに区分される割合が高まった。小学4年生の2・5%に対して、5年生6・1%、6年生8・9%、中学1年生12・5%、2年生17・4%となった。低学年での理解不足が積み重なり、算数・数学を苦手とする子どもが増える実態が浮き彫りとなっている。 今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の正答率順位は小中学校の算数・数学とも43位で下位に甘んじる結果となった。県教委は退職校長を教員へのアドバイザーとして10地区に配置した。過去の授業内容を振り返りながら、つまずきの原因を取り除く指導を進めているが、状況が大きく好転しない現状では、一歩踏み込んだ対策が求められるだろう。
世界最高峰の知的研究開発機関を目指す浪江町の福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)は、人材育成を機能の柱の一つに掲げている。所属する研究者らの協力を得て、独自の算数・数学プログラムを組み立てるのも一案だ。県内のものづくり企業の工場見学などを通じ、児童生徒が技術開発や発明に関心を抱くきっかけを数多く生み出してほしい。学びを習慣化するには、保護者の理解を一層喚起する必要もある。家庭と教育現場がより密接に情報交換する機会を設ければ、学びの状況を共有できる。 国家の繁栄に格差が生じる背景を解明し、昨年のノーベル経済学賞を受けたダロン・アセモグル、ジェームズ・ロビンソンの両氏は共著「国家はなぜ衰退するのか」で、教育と技能が18世紀後半の産業革命を支えたと指摘した。AIなどの第4次産業革命が進む中、人材への投資こそ未来への発展に向けた絶対条件と心得たい。(菅野龍太)