【建築業と林業の起死回生策】AIによる木造資材効率化と適正な利益配分、建築が林業を変える
人手不足といえば、トラックドライバーや介護福祉従事者、さらに飲食店やコンビニ、ホテルなどの従業員……。昨今、どこの業界も悲鳴を上げている。なかでも深刻さを増しているのが建築業界だろう。このままでは家が建たなくなる。 【写真】建築業界の人手不足解消で林業経営を盛り上げる「大型パネル」 そんな中、住宅建築の世界に新たな動きが起きている。それは建築業界内だけに留まらず、木材調達の方法にも大きく影響し、日本の林業界をも変える力になるかもしれないというのだ。今回は、そんな動きの一端を覗いてみたい。
大工に課される負荷と効率化
近年、住宅の新設着工件数は減少の一途だ。だが、それ以上の割合で減少が進んでいるのは大工などの建設関係の職人の数である。しかも高齢化が進む。 60歳以上の大工の割合は2010年で28%だったが、20年は41%。大工人口は10年に約40万人いたが、20年は約30万人に。高齢化は減少を加速する。 一方で住宅建材の重量化が進む。たとえば窓枠のサッシは、断熱など高性能化が進み、アルミのシングルガラスだったら約35キログラム(kg)だったものが、樹脂フレームのトリプルガラス製となると約120kgと4倍近くになるのだ。高齢の大工がそうした建材を持ち上げて設置するのは大変な労力であるのは想像がつくだろう。 加えて断熱材や防水シートの設置など従来の大工仕事になかった仕事も増えた。それらを建築現場に搬入して、設置後は梱包材などのゴミ処理もしなくてはならない。 そんな中、急速に伸びているのが工場で住宅の壁や床をパネルとしてつくり、それを現場で組み立てるだけという「大型パネル」式建築である。
パネルと聞けば、ハウスメーカーなどが進めるツーバイフォーやCLT(直交集成板)を思い浮かべるかもしれない。壁で躯体構造を支える工法だ。 基本的に規格化した同一形状の大量生産で、しかも各メーカーが「特別認定」を受けた設計になっている。設計の自由度も低く、間取りや窓・扉の大きさや位置など施主の細かい要望には対応しづらい。