巧妙な『地面師詐欺』も”ある書類”を読めば一発で見抜ける!…プロの司法書士でさえ見落としがちな”ある書類”とは
今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第60回 『“かさ増し”した29億円を見せて「その土地を買わせてください」…取引当日に「突然現れた男」を信じてしまう“地面師”のヤバすぎる手口』より続く
司法書士を信用させた「驚きの方法」
不動産売買をする場合、本当に買い手に資金力があるか、売り主はそれを確認する。 その際、会社の資産状況を示す証拠として、銀行に現預金の残高証明書を発行してもらうのが、ふつうである。が、残高証明には手形入金の記載があり、それだとクズ小切手による入金工作がばれてしまう。そこで北田は、通帳や残高証明ではなく、ATMの伝票を持ち主や津波側の司法書士事務所の職員に見せ、信用させた。 実際は、よく見るとATMの伝票にも小切手による入金が小さく記されているのだが、なかなか気づかない。持ち主の西方はもとより、取引のプロである津波側の司法書士も見落としてしまったという。 取引の現場には、東亜側の司法書士である亀野裕之の部下が立ち会っていた。津波側の司法書士も、同じ司法書士同士で、まさかそこまでするとは思っていなかったのかもしれない。津波はこう悔しがる。 「あちこちで悪事を働いている亀野は、私の事件のときちょうど懲戒処分を受けている最中でした。それで表向き取引に立ち会うことができない、ということで代わりに部下を派遣して、取引現場に座らせていただけでしょう。その部下は自分の意思も何もない操り人形みたいな感じだったそうです。それでも、こちら側の司法書士事務所の職員は、プリエにはたしかにけっこうな預金があるんだなって思ったそうですからね」 津波側の司法書士事務所の職員は、東亜エージェンシーの松田側がY銀行町田支店で5億円を引き出し、その引き出し伝票をもとに、M銀行学芸大学駅前支店にいるプリエ側に送金するものと信じ込んでいた。だが、そうはならない。
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