『VRChat』を始めてみたら、「ジオシティーズ」と『Habboホテル』への郷愁を覚えた話
リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTikTokまで、ありとあらゆる「エンタメ×テクノロジー」に囲まれて過ごす編集部のスタッフが、リレー形式で毎週その身に起こったことや最近見て・試してよかったモノ・コトについて気軽に記していく。 【画像】気さくに声をかけてくれた先輩『VRChat』プレイヤー 第二回は、『Meta Quest 3』発売を機に『VRChat』の世界へ飛び込み、ものの見事にドハマりした編集部員・三沢がお送りします。 ■タイミングを逸していた筆者、発売日に『Quest 3』を購入する もとからVRに興味はあったのですが、実は自前の機材を所有していなかった筆者。取材で何度も『Meta Quest 2』には触れていたし、動向もチェックはしていたのですが、『Quest 2』の値上げや『Quest 3』発売の噂を耳にしていたことで二の足を踏んでいたんですよね。 そうして購入タイミングを逃し続け、ようやく先月の10月10日に『Quest 3』が発売を迎えたわけです。先行でレビューもさせてもらったので「時はいまだ」とばかりに喜び勇んで編集部近くの電気屋に駆け込んで購入。さっそく自宅のPCに接続して『VRChat』の世界へ。もともと『VRChat』をプレイしていた別のゲームのフレンドに軽くアバターの展示ワールドや基本的な操作方法をレクチャーしてもらい、一人でも放浪してみることにしました。 『VRChat』を外側から観測していたおかげで、なんとなくはじめに訪れるべきワールドについては頭に入っていた筆者。とりあえず日本人の集まるパブリックインスタンス(誰でも入れる公共の場)へ。部屋のあちこちで“壁”に向かって肩を並べて雑談をする先輩方の姿にビビりながらも、勇気を出して近づいてみることに。 「こんばんは」 「おー、Visitor(ビジター)さんだ」 「よろしくねー」 めちゃくちゃ声をかけてもらえます。この世界の人たち、本当に気さくで優しい方が多いです。とくにユーザーランク(※)が「Visitor」「New User」だとわかるとすごく丁寧にいろいろと教えてくださるので、これはすごくありがたかったです。受けた恩はぜひ次の初心者の方にもつないでいきたいところですね。 (※ユーザーランク……そのユーザーがどれだけ『VRChat』をプレイしているかの指標となるもの。プレイするにつれてVisitor<New User<User<Known User<Trusted Userの順で上昇していく) ■アバターを購入したら改変にドハマりし、ネトゲジャンキー時代の記憶が呼び起こされる ところで『VRChat』といえば、どんな遊び方を想像するでしょうか? 綺麗な景色を楽しめるワールドを巡ってみたり、ゲームの遊べるワールドやパーティクルやギミックを用いたライブ演出を楽しんでみたり、これ以外にもさまざまな遊び方が存在します。 自分のアバターを着飾る「アバター改変」はとくに人気が高いのではないでしょうか。この「改変」は販売されている素体とそれに合わせて製作された3D衣装を、ゲームエンジンの『Unity』を用いて着せ替えることを指していて、BOOTHなどを中心にさまざまなアイテムが販売されています。 なかには自分でアバターを1から製作(フルスクラッチ)するという方もいらっしゃいますが、これには『Blender』などの3Dモデリングソフトを扱う技術が求められるため、そこまで手を伸ばしているユーザーはそう多くない印象です。 そして、まあこのアバター改変が楽しいのなんの。そもそも筆者は昔から重度のネットゲーム中毒で、俗に言う「見た目装備」や「衣装装備」の類いが好きな人間でした。最近のタイトルでいえば『ファイナルファンタジー14』では「ミラプリ」にハマり、「モンスターハンター」シリーズでも見た目で装備品を選んでいたくらいには、キャラクターを着飾るのが好きなんです。 すでにBOOTHの購入金額がエラいことになっているので、そろそろBlenderを触って自作衣装に手を付けようか真剣に検討しているところです。もしかしたら、次回の担当回は「Blenderでオリジナル衣装を作ってみた」というテーマになっているかもしれません……。 ■最先端であるメタバースの世界に飛び込んだことで、郷愁を覚える 順調に『VRChat』にドハマりしている筆者ですが、ふと「懐かしさ」を感じました。これがどこからやってきたものなのかについて考えてみると、自身の「インターネットの原体験」にたどり着いたので、少しばかりその話もしてみようと思います。 筆者は幼い頃からパソコンに触れ、タイピングゲームで遊んだり、ネットサーフィンを楽しんだりするような子どもでした。とくに熱中したのは、「インターネットに存在するホテル」をテーマにしたブラウザゲーム『Habboホテル』。ドットで描かれたアバターを操作して、さまざまな部屋でチャットを楽しむという内容なのですが、いわゆる「電脳空間」に人がいる感覚が楽しくて、毎日学校から帰ってきてはホテルに“チェックイン”して会話に興じていた記憶があります。 振り返ってみれば、年を重ねるごとにまったく知らないコミュニティに飛び込む機会がどんどん減っていました。インターネットで知らない人と会って、その場のおしゃべりを楽しむーーそんな体験が『Habboホテル』での日々を思い起こさせたわけです。 そういう意味でいえば、かつてYahoo!JAPANが運営していた「ジオシティーズ」では各WEBサイト(当時の呼称でいえばホームページ)に通りの名前(ストリート名)と番地が割り振られていて、どこか「ここは電脳空間なんだな」と感じたことも思い出します。 自分のWEBサイトをみんなが持っていて、お隣の番地の「管理人」さんのところへ引っ越し挨拶さながら挨拶まわりをする……そんな不思議なカルチャーが存在したことを考えれば、どこかWeb3的でもあり、現在のメタバースや仮想空間での体験と通ずるところがありますよね。 最先端のメタバースに飛び込んでみたら、「アバターを飾ることの楽しさ」や「自分とインターネット」「昔のインターネット空間」についてあらためて振り返る/考えるきっかけを得た。そんなお話でした。
三沢光汰