「イスラム国はピーク過ぎた」「中東はパラダイム転換期」「スンニ対シーア広がる」 中東専門家3人が議論
ブランド化した「イスラム国」
「イスラム国」は、残虐性と攻撃性でイラクとシリアにまたがる地域で支配を拡大し、世界を震撼させている。「『イスラム国』はいまやブランド化してしまった」。鈴木氏はこう分析する。「(イスラムでも)とんでもないと言っている人がほとんどだが、一部の人に訴えかけるものはある」。その理由は、彼らが「カリフ制」をうたっている点にあるという。カリフとは、イスラム教の預言者ムハンマドの後継者を意味し、「イスラムに本来あるはずの指導者」だ。そのため「カリフと名乗ってしまうと、一定数の人には惹きつけるものがある」のだという。 そんな「イスラム国」だが、高橋氏は「勢力拡大のピークは過ぎた」と見る。「軍事面では明らかに劣勢で、経済面でも安定収入だった石油が米国の爆撃などで苦しくなってきた。ここまでブランド化したのは戦闘に勝ってきたからだが、だんだん撤退を始めている。そうなると、これまでのように人を集められるのか」。
■「方針転換」した?日本政府
議論は日本人拘束事件をめぐる安倍政権の対応にも及んだ。首相の中東歴訪が影響したと批判する声もあるが、鈴木氏は「人質を取られた時点でアウトだった。それをたまたま安倍首相が来た時に使われてしまった。安倍首相が行ったから、ということではない。それぐらい『イスラム国』は手強い」との見方を示した。 黒木氏はそれとは違う見方を示す。「イスラエルのネタニヤフ首相と並んで安倍首相が『テロとの戦いに取り組む』と言った。これは広くアラブの人たちに『やはり日本はそうだったのか』と思わせるものだった。長期的には大きな問題になる」と懸念した。 これまで日本は身代金を払う国だと見られていたが、高橋氏は、政府の「方針転換」への説明が必要だと語る。「おそらく日本政府は身代金は払わないという方針を選択した。それがいいことかどうかは国民が決めること。払ったとしたら人質を取られやすくなるのも事実」とした上で、「指導者には『こういう政策でいきたい』と訴えていただきたい」と語った。