電力・水・土地・人材 AIが引き起こす「資源競争」に備えよ
水資源、ネットワーク、レアメタル、頭脳流出
■「喉が乾きやすい」チャットボットと水資源問題 記事は、2030年までにデータセンターが1日あたり約5億ガロン(約19億リットル)の水を必要とする可能性があると試算している。これにより水資源をめぐる争いが起き、地域社会の飲料水確保にも影響を及ぼす可能性がある。興味深い例として、ChatGPTに10~50回質問するだけで、16オンス(約473ミリリットル)のペットボトル1本分の水を消費する計算になるという。 LLMが、人間が会議中に水を飲むのと同様に、自ら専用の水を消費しているかのような比喩も可能だが、その結果、飲用可能な水資源への需要は相当に深刻化する。 ■ネットワーク需要、データを必要な場所へ届ける さらに、これらのシステムに対応するためにはネットワーク能力も拡充が求められる。記事は、Verizonなどの企業が対応を強化していることや、新たなデータセンター需要が市場へ影響を与える点にも言及する。また、企業が既にクラウドへ移行していたことによって、AI出現前からある程度ネットワーク需要増を見越していたことにも触れている。 2020年4月に、The Cabling Science Instituteのジェームズ・ドノバンは次のように述べている。「長年にわたるコンピューティング性能の劇的な向上は、それらが生み出すネットワークトラフィックに反映され続けています。現在のソフトウェアは、デバイスが利用できるネットワーク帯域幅をまだ十分には引き出していませんが、増加傾向は明らかです。デバイスが音声、映像、マルチメディア、そしてデータを同一ネットワークで扱えるようになることで、これらすべてが1つの基盤上に収束しつつあります。この収束は、各領域の急速な成長と相まって、ネットワーク容量への需要をさらに高めています」 ■レアメタルをめぐる争奪戦 もう1つ重要な観点は、いわゆる「チップ戦争」や原材料確保、地政学的緊張の影響である。米国と中国はテクノロジー分野で相互の保護主義的措置を始めており、その一例として中国は希少金属であるガリウムやゲルマニウムの対米輸出を禁止している。さらに中国はシリコン資源を豊富に有しており、米国企業や政府は政策立案時にこれを考慮せざるを得ない状況だ。 ■「頭脳流出」の問題 最後に、記事は膨大な人材確保の難題にも触れている。これは単に失業者を大量投入してデータエンジニアに仕立て上げる話ではない。次世代のAI時代を主導できる熟練の専門家を確保することが鍵となる。 以上のような問題を踏まえ、今後を考える必要がある。AIは確かに多くを求めている。その需要をいかに満たすかは、これからの世界にとって極めて重大な意味を持つのだ。
John Werner