「ハマス」を排除しても、誰がガザ地区の治安と復興の面倒をみるのか
ハマスに言うことを聞かせられる人がいない
兼原)皮肉な話ですが、1993年のオスロ合意により占領地から撤収し、ガザからも撤収して入植者を引き揚げたら、ハマスに獲られてしまったのです。いまは手がつけられなくなっています。 飯田)ヨルダン川西岸を治める、ファタハなりパレスチナ自治政府が統治するのが筋ですか? 兼原)ファタハは元パレスチナ解放機構(PLO)ですから、PLOと手打ちを行い、イスラエルとPLOは共存することになった。でも、ガザはPLOの反主流派なのです。ムスリム同胞団の人たちで、イスラエルはPLOを弱めようと思い、最初は支援していました。しかし、これが獲ってしまったので、彼らはPLOの言うことは全然聞きません。反イスラエルに振れているので誰も手がつけられない状況です。彼らはアッバス議長の言うことは聞きませんから。 飯田)パレスチナ自治政府の議長。 兼原)ネタニヤフさんに、「もともとあなたが助けたのだろう」と言うわけですよ。 飯田)最後まで責任を持ちなさいと。 兼原)対するネタニヤフさんは、「そこを何とかしろ。ここはパレスチナの一部ではないか」とアッバス議長を叩くのですが、結局ハマスに言うことを聞かせられる人がいないのです。ヒズボラとイランもうしろにいるので、裏の影響力もあります。
ハマスを一旦排除しても必ず復活する
飯田)まず統治主体がないし、復興も難しい。 兼原)一旦ハマスを根絶やしにしたとしても、消えません。草のようにまた生えてきます。刈り取らないとまた来るので、軍事的な脅威を全部除去する方向になると思いますが、どう治安を確保し、復興するのか。頭が痛い状況だと思います。 飯田)日本は人道面、子どもの教育、医療面などでは力を入れていましたが。 兼原)日本はパレスチナ支援を真面目にやってきたのです。軍事力が使えない国なので、パレスチナとイスラエルの仲介に入り、パレスチナの経済支援、政府開発援助(ODA)を一生懸命進めてきた。日本に対しては、アラブやイスラエルの国々も「ありがとう」と言っていたので、いい立ち位置だったのです。今後は復興の部分でも入っていく必要があるかも知れません。