マイナンバーとマイナカードは「別物」 ナンバー記載がカードの利便性を下げる 他人に見られたくない個人情報を持ち歩く矛盾 いっそのことナンバー消して名前も変える?
■マイナンバーは財務省、マイナカードは総務省
佐藤一郎教授: マイナンバーカードは、「住民基本台帳カード(以下、住基カード)」の後継としてスタートしました。電子証明書としては、多額の税金を投じた「住基カード」をそのまま使っても良かったはずですが、普及が進まなかったので、マイナンバーカードに置き換えました。 しかし、利用率の低さといった住基カードの問題を総括しないまま、マイナンバーカードを始めてしまったので、こちらも普及が進みませんでした。 そもそも、住基カードをやめて、マイナンバーカードに切り替えた理由も説明されていません。「住基カードにこういう問題があったから、止めて、マイナンバーカードを作りました」ということを言わずに、いろんなものをうやむやにして始めてしまったといえます。 当初は、マイナンバーの制度づくりは税務的な理由で財務省が主導し、マイナンバーカードは、住基カードの後継として総務省が主導しました。このことからも、両者は方向性が違うことが分かります。 マイナンバーを日本に住民票がある人全員に割り当てて、それを使ってもらうために、カードの裏面に書いておけば、何かあった時に使ってもらえるでしょう、番号を覚えてもらえるでしょう…ということで記載をしたと推測されますが、結果的には、裏面にマイナンバーを書いてあるために、マイナンバーカードが非常に使いにくいものとなってしまいました。その使いにくくなったマイナンバーカードの普及のため、マイナポイントで多額の税金を使ったことを考えると、マイナンバーを記載したカードを別に作って対象者全員に配り、マイナンバーカードにはマイナンバーの記載をせずに利便性を高めた方がよかったといえます。
■マイナンバーは知られてはいけないものなのか?
佐藤一郎教授: 今のところ、マイナンバーの使用用途は、行政や保険組合、病院などに限定されていますので、他人に12桁の番号を見られても、すぐに被害に遭うわけではありません。それはマイナンバーが公的な範囲でしか使われてこなかったからです。 しかし今後、マイナンバーが民間の事業者にも利用が広がり、いくつもの事業者がそれぞれの利用者情報をマイナンバーを使って名寄せするようになってしまうと、何かしらの不利益が出る可能性はあります。というのは、マイナンバーは各個人がひとつだけ持つ正確な番号ですから、そのマイナンバーを使えば、異なる事業者がもつ個人に関する情報を容易かつ確実に名寄せができます。つまり同じ個人の情報として分かるのです。 異なる事業者がもつ個人に関する情報が連結されて、想定を超えるような詳細な情報が作られることも考えられます。例えば、銀行などの信用情報と薬局の購買履歴がマイナンバーによって同じ人物に関する情報と分かれば、銀行が本来知らないはずの病歴を理由に融資を断るかもしれません。 このため、マイナンバーの民間開放は慎重であるべきでしょう。 マイナンバー(12桁の番号)が記載されているマイナンバーカードの裏面のコピーは、法律で厳しく規制されています。そこまで慎重に扱うことが必要なのが、マイナンバーなのです。
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