福島大、福井県 コメの遺伝子仕組み解明 出穂期調整可能に 猛暑に強い品種の開発に期待
福島大は福井県農業試験場との共同研究で水稲の四つの遺伝子の組み合わせによって穂が出る時期(出穂期)が変わる仕組みを解明した。技術を応用すれば出穂期が異なる品種の改良・開発が従来より容易になる。出穂期の気温などがコメの収量や品質を左右するため、近年の猛暑による不作や品質低下といった課題の解消に役立つと関係者は期待している。同大は今後、福島県などと連携し福島県農業の振興に研究成果を生かしたい考えだ。 研究に携わった同大食農学類発酵醸造研究所の菅波真央特任講師(32)が13日に開かれた大学の定例記者会見で発表した。 出穂期の異なる品種の改良・開発は育種家の経験や勘に頼る部分が大きく、ノウハウを科学的に説明することは困難だった。菅波特任講師らの研究グループは「コシヒカリ」を筆頭に数多くの優良品種を育成してきた福井県農業試験場と連携。試験場が1947(昭和22)年から約80年にわたって育成してきた252系統の水稲のゲノム情報を1年以上かけて解読した。四つの遺伝子「Hd1」「Hd16」「Hd17」「Hd18」の組み合わせによって多様な出穂期の水稲が育つことを科学的に突き止めた。
猛暑によるコメの品質低下や収量減は県内はもとより全国的に大きな問題となっている。今回の研究成果を活用してさまざまな品種を生み出すことができれば、穂が出る時期と猛暑の時期をずらして生育不良を回避することも可能になる。穂が出る時期が異なる複数の品種を並行して栽培すれば刈り取りなどの作業を分散でき、農家の忙しさの軽減にもつながる。菅波特任講師は「気候変動に対応するため出穂期の調節は有効な対策の一つになる」と話している。