日本株の持ち合い解消に商機、手数料8000億円巡り証券各社が争奪戦
過当競争
日本ではブロック取引と第三者割当増資の件数が増加しており、2024年はこれまでに55件、前年同期比で53%増となった。アジア太平洋地域全体の同9%増を大幅に上回る。
事情に詳しい関係者によると、アジア太平洋地域では日本のブロック取引に対するヘッジファンドなどの意欲が旺盛だ。米国を拠点とする投資家の間では、1案件に対して関心を示す人数が2年前の約50人から現在では200-300人に膨らんでいるという。
証券会社間の競争はすでに激しさを増している。野村証券のIB企画部長兼IBビジネスサポート部長の大塚隆史氏は、持ち合い解消の動きを歓迎しながらも、「市場の一部では手数料の過度な引き下げ競争が横行しており、リスクに見合わないケースも見受けられる」と指摘する。
構造変化に世界が関心
日本で長く続いてきた株式持ち合いという慣行は、株主の圧力から経営陣を守る一方、本来は成長投資に回すことのできる資本を眠らせてきた。しかし、大手損保による企業向け共同保険の価格調整問題を契機に状況は一変した。
金融庁は持ち合いの存在が公正な競争阻害の遠因になっているとして削減加速を促し、損保4社は6兆円超に上る保有株をゼロにすると公表した。売却促進の動きは銀行などにも広がっている。
三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループは保有する1兆3200億円相当のトヨタ株の売却を検討している。一方、トヨタも持ち合い見直しに向け動き出しており、昨年のデンソー株の一部売却に続き、アイシン株の一部も手放した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券エクイティ・キャピタル・マーケット部の花倉恒徳参事は、持ち合い解消が損保以外にも広がる中、「各セクターをカバーするカバレッジバンカーとの連携を密にしている」と説明。エクイティーファイナンス関連の「チームの増員も必要な状況」になっているという。
SMBC日興証券の本川連マネジングディレクターも「提案やアドバイスはこれまで以上に増えている」と話す。売却に期限を設定する動きがあるなど、持ち合い解消が具体化してきたことで、買い手候補となる海外投資家の関心もより高くなってきたとしている。