日本軍は捕虜に過酷な生活を強いた。資料は終戦直後に焼却。「ふたをされた負の歴史」を掘り起こした女性に聞く【つたえる 終戦79年】
調べていくと、例えば東京・大森の収容所には、捕虜にすさまじい暴力を振るうことで有名な下士官がいたことが分かりました。理不尽な扱いが横行するような実態があったのです。 ▽捕虜虐待の問題、若い世代に 米国の元捕虜の会合に参加した時には、日本人と分かると「つらい記憶を聞いてほしい」と私の前に行列ができるほどでした。深刻なトラウマを抱えていて、私と話しているうちに激高する人もいました。 捕虜に暴力を振るっていた人も、家に帰れば「いい父親」「いい息子」だったのかもしれません。軍隊が人間性を奪ったり、戦争によって人間性がゆがめられたりしてしまう、という面もあったのでしょう。捕虜の扱い方について、正しい教育を受けていなかったことも問題でした。こうした歴史を知ると、何とか多くの人に伝えたいと思うようになりました。 捕虜虐待の問題は今も世界で起きています。戦争の一断面として知らなければならないことではないでしょうか。特に若い世代に読んでほしいと思っています。
× × ささもと・たえこ 1948年宮城県生まれ。POW研究会共同代表。著書に「連合軍捕虜の墓碑銘」がある。