水への渇望が厳しい現代社会を力強く生き抜く姿にも重なるヒューマンストーリー 映画「渇水」
芸達者な豪華キャスト陣が撮影秘話を明かす貴重な映像特典
出演者には芸達者な俳優たちが揃う。主人公の水道局員を演じた生田斗真は、終始浮かない顔をした感情表現が少ない役柄だが、その端正な顔立ちで主役としての存在感と微妙な感情の変化を繊細に表現してみせている。そして、育児放棄している母親役の門脇麦、主人公の同僚で後輩役の磯村勇斗、主人公の妻役の尾野真千子らが共演。今年だけで7本の出演映画が公開された磯村は、本作を含めたその好演により、既に発表された第45回ヨコハマ映画祭助演男優賞をはじめ、今年度は多数の映画賞に輝くことになりそうだ。また、髙橋監督が、助監督として「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」で組んだこともある宮藤官九郎が俳優として出演し、作品冒頭の印象的な滞納者役を演じている。 12月22日にリリースされるBlu-ray豪華版には、ブックレットと共に特典DVDが封入。特典DVDには約46分のメイキング、完成披露試写や初日舞台挨拶など総計約90分近い4つのイベント映像集、予告編を収録。 メイキングやイベント映像では、生田らメインキャスト、髙橋監督、白石などが、撮影秘話や作品に込めた熱い想いなどを明かしている。日照り続きのカラカラの猛暑を描いた作品だが、撮影中は逆に雨に悩まされ続けていたことや、本作は16ミリフィルムで撮影されており、その少し荒い粒子感がジリジリとした空気感にあっているが、俳優陣もスタッフも、近年は数少ないフィルム撮影ということで、いい緊張感が生まれると共にテンションもあがったことなどを語っている。 また、母親からネグレクトされている姉妹を演じた山﨑七海と柚穂の子役二人には、あえて台本を渡さず、撮影当日にシーンの説明や台詞を伝え、物語の行方を知らない中での新鮮な芝居を引き出そうとしたことや、他のキャストは二人と親しくしすぎないようにも要請されていたそうで、お互いしか頼る者がいない本物の姉妹のような関係性が生まれていったようだ。初共演ながら生田が磯村について「長い付き合いになりそう」と語るほど仲を深めた二人の様子や、オフショットのスチールも多数見ることができ、貴重な映像特典となっている。 文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社
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