日銀、東北と北陸の景気判断引き上げ 賃上げに慎重姿勢、追加利上げぎりぎりまで見極めか
日銀は9日公表した1月の地域経済報告(さくらリポート)で全国9地域のうち、東北と北陸の景気判断を引き上げ、残る7地域は据え置いた。先立って行われた支店長会議では、各地域とも景気の回復や持ち直しが続いているなどと総括した。日銀が重視する賃上げをめぐっては、中小企業を中心に慎重姿勢が根強い。23、24日の金融政策決定会合で利上げに踏み切るか、ぎりぎりまで賃上げなどの状況を見極めることになりそうだ。 「(賃上げの動きは)企業ごとにばらつきがある」。9日の会議後、記者会見した日銀の神山一成大阪支店長は、こう述べた。 さくらリポートでもインバウンド(訪日客)の旺盛な需要で堅調な個人消費や、人手不足に対応するための積極的な設備投資など、全体的な景況感は前向きな見方が多い。 一方、賃上げに関しては「2025年度も前年並みの賃上げを行う」(函館支店管内のスーパー)、「賃上げ幅を縮小する予定」(金沢支店管内の運輸業)などまだら模様となっている。競合他社の動向を見極めようと、具体的な賃上げ率を固めていない企業も多い。 この数年、賃上げの流れは続いているが、物価上昇の勢いになお追いついていない。名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は22年4月以降、夏季賞与の押し上げ効果が寄与した24年6月と7月を除き、前年同月比でマイナス圏に沈んだままだ。石破茂政権が目指す「成長型経済」への移行には、賃金が物価上昇を安定的に上回る状況となることが不可欠だ。 足元の消費者物価指数(総合)は、円安基調による輸入物価の上昇などで、日銀が目標とする2%程度を上回る状況が続いている。日銀の追加利上げの時期はそう遠くない。 ただ、景気を冷ます効果もある利上げのタイミングやペースを誤れば、景気への悪影響や市場の混乱を招きかねない。 23、24日の決定会合では、25年春闘の展望や価格転嫁の動向を見ながら、最終的な判断を下すことになる。(永田岳彦)