デジタル教科書、小5~中3英語に本格導入 習熟度に合わせた学びに期待 「頼りすぎない」工夫はなぜ必要? 手探りの学校現場を見た
文科省は導入の利点について、文字の拡大や書き込み、音声の読み上げができ、子ども一人一人の能力や特性に応じた「個別最適な学び」が進められると説明。さらにデジタル端末を使えば意見や考えを共有しやすいため、児童生徒同士が学び合う「協働的な学び」にもつながるとする。
デジタル教科書は、小学校の学級担任が英語を教える際にも役立つ。 文科省は22年度、専門免許を持つ教員が授業を受け持つ「教科担任制」を小学5、6年の英語などで始めた。ただ、大学の小学校教員の養成課程で英語の指導法に関する科目が設けられたのは19年度から。現役の小学校教員は必ずしも英語指導を得意としているわけではないのが実情だ。
東筑摩郡麻績村麻績小学校は本年度、英語の教科担任が不在で、学級担任が授業を受け持っている。6年の担任を担う加藤紗絵教諭は、英語の教員免許を取得しているものの、これまで教える機会は少なかった。
加藤さんはデジタル教科書で、子どもたちが習熟度に合わせて学べることを歓迎する。教員は児童の得意や不得意に応じてサポートしやすくなるとして、「教える側にとっても授業を進める上での助けになる」と実感を込めた。
コミュニケーション力養うため 「頼りすぎない指導」を工夫
音声の読み上げや動画視聴ができるデジタル教科書は、児童生徒の学習理解を助ける機能が充実している。一方、英語教育は自分の気持ちや考えを相手に伝えるコミュニケーション力を養うことが重視されるだけに、教員側にはデジタル教科書に偏りすぎない活用方法が求められる。
信濃町信濃小中学校の水越恵美子講師は、デジタル教科書の利便性を評価した上で「英語はコミュニケーションが何よりも重要」と強調する。そのため、授業でどう効果的に使うべきか難しい―と手探りが続いているという。
英語を話す上ではアイコンタクトや表情が大切とし、「(デジタル教科書の)画面ばかり見るのではなく、バランスを取った授業にしたい」と説明。授業では外国語指導助手(ALT)や子ども同士で会話する時間を設けており、デジタルに頼りすぎないことを意識したいとする。