今後は1対1がさらに激化!? 首位ターンの町田が福岡戦で露呈した攻略のヒント【コラム】
福岡に長所を消されて苦戦
しかし、試合後の記者会見で長谷部茂利監督が「町田はやりづらかったと思う」と語ったように、町田は強度を自慢にしている自らのスタイルを上回る福岡の激しいディフェンスに対して、さまざまな工夫を見せて突破を試みたが、その動きも実らず沈黙することになる。特に福岡のゴール前の守備は鉄壁で、町田の隙があれば前に行くぞという姿勢から生まれる素早い展開からの攻撃もゴールまでは届かなかった。 町田に限らず多くのチームに言えることだが、やはり自分たちの長所を消されては、よほどの対応力を持っていなければ二の矢、三の矢と状況を打開する手段を繰り出すことは難しい。そして、福岡の戦い方は町田攻略の1つの方向を示したと言える。それを実行するには選手たちの戦う強い意志と、肉体的な強靭さを必要とするため簡単ではないが、町田にはテクニックで対抗するのではなく、真っ向勝負のフィジカルで挑むのが勝利への有効な方法であることを実践して見せた。振り返れば、第6節で対戦したサンフレッチェ広島もフィジカル勝負に持ち込んで町田に黒星(1-2)を付けている。 これまでの町田の躍進は、勝負への飽くなき追及を根幹とするフィジカルを全面に出したプレーで、相手の長所を消す戦い方が功を奏してきたからだ。だが、福岡は町田の強さを認め、慎重に試合を進めて逆に町田の長所を消しにきた。町田にとって負けなかったとはいえ、内容で奮わなかった福岡戦は今後に向けた課題を浮き彫りにしたことになる。 これからはリーグ前半戦を首位で折り返した事実によって、対戦するどのチームも町田との試合では自らの長所を出すことに専念するのではなく、警戒心を持って慎重に挑んでくるはずだ。簡単には勝てないという思いから、試合を構成する最小の局面である1対1の場面でも、より激しく臨んでくるだろう。 得意のサッカーをやらせてもらえない試合が増えていくことも予想されるなか、町田はこれまでのように勝ち点を積み重ねていけるのか。リーグ後半戦は町田のサッカーの真価が問われることになる。 [著者プロフィール] 徳原隆元(とくはら・たかもと)/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。80年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。
徳原隆元 / Takamoto Tokuhara