日本航空石川監督「支援への感謝プレーで見せたい」 センバツ
8日に大阪市北区の毎日新聞大阪本社オーバルホールで開かれた、第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の組み合わせ抽選会。1月の能登半島地震で石川県輪島市の校舎が被災し練習拠点を山梨に移した日本航空石川(4年ぶり3回目)は、大会第6日の23日の第1試合で、春夏の甲子園で優勝経験がある常総学院(茨城)と対戦することが決まった。中村隆監督(39)は「支援への感謝を胸に、能登を背負ったプレーを見せたい」と、宝田一慧(ほうだいっけい)主将(2年)と共に意気込んだ。 【写真で見る】対戦が決まった32校 元日の地震で日本航空石川の校舎周辺の道路は損壊し校舎も使えなくなった。監督や野球部員は正月休みで県内外に帰省中で、実家が被災した部員もいたが、幸い大きなけがをした部員はいなかった。 野球部はセンバツに出場できる可能性があったため、系列の日本航空高山梨キャンパス(山梨県甲斐市)への避難が決まり、部員たちは段階的に山梨へ移動した。教室を宿舎代わりにして生活する中、1月26日にセンバツ出場決定の吉報を受け取った。 しかし、中村監督によると、激変した環境でセンバツに向けてチームを仕上げるのは「容易ではなかった」。 練習場所として閉校した別の高校のグラウンドを借りられたが、当初はボールなどの野球用具に加えグラウンドの整備用具なども不足。半月以上も全体練習ができなかったため、体力の低下も深刻だった。また、一つの教室に十数人が段ボールベッドを置いて生活する環境のため、チームの約半数がインフルエンザに感染するなど感染症にも悩まされた。 そんなチームは全国からの物心両面での支援に支えられた。「グラウンド整備用具がないと野球関係者に伝えたら、2、3日で希望していたよりも多くの用具を送っていただけた」(中村監督)。他の野球関係者からも、練習用具や教室の乾燥を防ぐ加湿器などが次々と寄贈された。 地域住民からは、練習の合間に郷土料理の「ほうとう」が選手たちに振る舞われるなどした。避難生活が続く能登半島周辺の被災者からは、ナインへの応援の声が届けられた。 中村監督の目には、全国からの支援を背に練習を重ねる中で、部員が変わったと映っている。「ミーティングを重ねてきたが、制限のある環境や厳しい練習にも、不平や愚痴が出なくなった。被災地に比べれば、野球ができている自分たちの悩みはちっぽけなものだと考えるようになったようです」。実際、宝田主将は「多くの方の支えと応援で自分たちは今、野球が続けられているのだと実感した」と話す。 中村監督は「これまで自分のため、両親のためにやっていた野球に、能登のためという使命が生まれたのも巡り合わせ。部員たちには、何かに一生懸命に打ち込めば、被災地に限らず見ている人に気持ちが届くと学んでほしい」と期待する。 能登半島地震が起きてから2カ月あまりたつが、自分の目でまだ輪島市などの被災地を直接見ていない部員もいる。中村監督は「強豪ぞろいのブロックに入ったが大きな応援をもらって初戦に臨むことになる。センバツが終わったら、報告会も兼ねてチームで一度、能登に戻りたい」。大会は18日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。【野原寛史】