「障害者雇用枠で採用したのに、障害を理由に雇い止めするのは違法」 元従業員が会社に対し約200万円を請求
「障害者雇用枠で障害を理由に雇い止めされることは極めて異例」
今回の申し立てでは、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、無効な休業命令による損失補償(107万円余り)、無効な雇い止め後の未払賃金(92万円余り)などを会社側に請求している。 申し立てと同日に行われた記者会見で、代理人の白神優理子弁護士は「障害者雇用について、申告した障害を理由とする雇い止めが許されれば、およそ障害者雇用は成り立たなくなることについて警鐘(けいしょう)を鳴らす」と、本件の意義を語った。 「会社はホームページに『障害のある方の採用を積極的に推進しています』と記載している。 Aさんが応募時に提出した書類には配慮すべき事項が適切に記載されており、主治医の診断書に書かれた合理的配慮もごく常識的な内容。しかし、会社は配慮を拒否した」(白神弁護士) 同代理人の尾林芳匡弁護士は、そもそも障害者雇用枠で障害を理由に雇い止めされることは極めて異例であると説明した。 「会社はAさんを復職させないまま期間満了まで引っ張り、最後の最後で雇い止めを行った。障害者雇用制度の趣旨に反した対応だ。 一般の労働者が能力主義的な理由で解雇される事例とは全く異なる。今回のような申し立ては、おそらく全国で初めての事例」(尾林弁護士) また、申し立てと同日、コミュニティユニオンは朝日生命保険相互会社への指導を厚生労働省に要請した。職業安定局長・東京労働局長に宛てて要請書を提出しようとしたが受け取りを拒否されたため、口頭での要請になったという。 コミュニティユニオン東京三多摩地域本部の福田かづこ氏は「憲法で定められた、障害者の働く権利を守ることも企業の責任だ」と語り、これからもAさんを支援していくと意気込みを示した。 以下は、会見でAさんが読み上げたコメント。 「私は、障害の関係で、高温や過集中の作業では、パニック発作を起こしやすいのは確かです。でも、私は仕事が好きだし、一緒に働く仲間も好きです。有無を言わせず職場から排除されることには、納得がいきません。 同じような扱いを受けて泣き寝入りをする人をこれ以上ださないためにも、申し立てをしました」
弁護士JP編集部