妹尾和夫が主宰 劇団パロディフライこだわりの稽古潜入
演じるだけじゃない「音」ひとつでも大切に
次に行われたのが本物のドラマの台本を使ってドラマのワンシーンを再現する練習。台本は、これまで妹尾さんが出演したドラマのものが使われる。再び劇団員で3人1組のチームに分かれ、ドラマのワンシーンを20分くらいで覚え、それを実践するというものだ。 今回の練習はリビングでの会話のひとコマを再現するものだが、テーブルやいすが並べられ、出演者の1人はキッチンで鍋を洗うという描写があった。稽古場には水まわりがない。そこで、妹尾さんはヘルメットを鍋に、新聞紙と軍手をスポンジに見立て、即席の小道具を作った。 だが、これはただ単に見立てただけではない。「皿洗い一つでも『音』が必要とされる時があるんです。あの皿の汚れを落とすための『キュッキュッキュ』という音がほしい場面もある。そのためには、皿を洗う手つき一つまで細かい演技をしなくてはならないし、それが求められるんです」と妹尾さんは熱く語る。 自身もこれまでの役者生活でドラマ撮影を経験。撮影のたびに、こうした点を指摘され続けてきた。そのため演技指導にも熱が入る。撮影現場の臨場感を出すため、妹尾さん自らが監督役になり「よーいスタート」といった声や、カメラマンの位置に立ってカメラを構えたりもする。 そして、「そこにマイクがぶら下がってるから音を意識して」という言葉までも飛び交う。自身が踏んできた現場の出来事をそのまま、劇団員に伝えているわけだ。「これまでにも、そう例えば若いころなんかは『部長刑事』や『水戸黄門』とかいろんなドラマに出して頂いたんですけど、先ほど言ったことができなくて、よく怒られたんです。だから、うちの劇団員には普段からこうして稽古をつけて、急にドラマなどのお仕事を頂いてもすぐに対応できるようにしてる感じです」と妹尾さんは語る。
アルバイトしながらでも演じられてうれしい
そんな妹尾さんのやり方を若い劇団員はどう受け取っているのか。ある劇団員は「座長は愛情いっぱいで指導してくれます。私たちもここの劇団員である以上は、恥ずかしくないよう、しっかり演技力を磨かなければいけません」と力強く話す。 劇団員には、タレントとして活躍する人からアルバイトをしながら生計を立てている人もいる。「大変ですけど、劇団で活動ができて本当にうれしいです」と語る劇団員は、毎年12月にシアタードラマシティなどで行われる本公演でもしっかり演じることができるよう、日々の努力を重ねる。 同劇団は今年で立上げから23年。妹尾さんは「今年もいろいろと飛躍していかなアカン年。いろいろな計画もありますので楽しみにしていください」と笑顔で語る。さあ、今後どのような活躍が見られるのか注目したい。