パンデミックを経験したのに再流行に無防備…韓国、来週のコロナ感染者35万人予想
政府、危機対応予算を半分に削減 国政課題だった治療薬の確保も不十分 公共病院の拡充計画も相次いで頓挫 病気になったら休む権利、傷病手当も延期
「先週末、新型コロナウイルス感染症の治療薬は京畿道光明市(クァンミョンシ)に1人分、水原市(スウォンシ)に1人分しかなかったそうです。それらの地域はほとんど治療薬を受け取れなかったはずです」(翰林大学江南聖心病院のイ・ジェガプ感染内科教授) 「学校にマスクをつけて登校しろという指針は特になかったけれど、新型コロナ再流行の話が出ているからつけて学校に行かせました」(小学4年生の保護者、キム・ヒジョンさん(38)) 韓国で新型コロナの拡散傾向が続いている。19日の疾病管理庁の発表によると、来週(25~31日)、新型コロナの感染者は35万人に達する見通し。昨年の流行の最高水準に迫る。新型コロナで入院している患者は、8月第2週(4~10日)で1359人(全国の病院級以上220カ所の標本監視)となり、今年に入って最大だった。政府は新型コロナの危機段階を高める計画はないが、2学期の始業を始めた学校現場はもちろん、あちこちで不安の声が上がっている。 新型コロナが収束していった間に、これまで得た教訓は忘れられた。新型コロナパンデミックの中で始まった尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、国政課題として提示した感染症対策さえもきちんと守っていない。新型コロナだけでなく新しい感染症がいつでも流行りうるという警告が出ている状況で、少なくとも当時約束した制度は急いで定着させなければならないという指摘が出ている。 ■治療薬「品薄」、急きょ追加確保へ 尹錫悦政権の国政課題の一つである新型コロナの再流行に備えた十分な治療薬(パクスロビド、ラゲブリオ)の確保は守られなかった。疾病庁の新型コロナ治療薬の予算は1798億ウォン(約198億円)で、昨年(3843億ウォン)より53.2%減った。新型コロナの流行水準をきちんと予測できなかった上、治療薬の健康保険登録を念頭に置いて予算を過少編成したためだ。感染症の危機対応総合管理に対する予算も13億3600万ウォンから5億ウォンへと半分以上減った。嘉泉大学吉病院感染内科のオム・ジュンシク教授は「高すぎると言って治療薬の購入予算を少なく見積もり、感染症監視システムを費用を理由に減らした」とし、「再流行の予測失敗は政府が作ったもの」と批判した。 医療現場では治療薬がなく非常事態となっている。京畿道で薬局を営むAさんは「保健所でも薬がなくなったと言い、近くの病院からも在庫を尋ねる電話が来る。昨日の朝も患者から電話が来たが、『(薬は)ない』と言った」と語った。 4月までに新型コロナの治療薬を保険適用登録するという計画もまだ進んでいない。新型コロナの治療薬は5日分の価格が70万ウォン(約7万7000円)以上と高価なので、保険適用する際に本人負担分などの調整が重要だが、これに対する議論は消えた。イ・ジェガプ教授は「保険適用しても価格があまりにも高くなり、お金のある人は薬を飲み、そうでない人は重症に悪化する可能性もあるる」として「保険適用するにしても価格を調整しなければならないが、そのような議論がない」と述べた。現在、新型コロナの治療薬の患者負担金は1日5万ウォン。 政府はようやく予備費3268億ウォン(治療薬約26万2千人分)を確保し、治療薬の追加購入に乗り出した。疾病庁は「追加で導入される分は来週までに全国の担当薬局に十分に供給される予定」だと明らかにした。 ■公共病院の拡充なし、傷病手当は保留 新型コロナの再流行の兆候を受け、保健福祉部は公共病院を中心に病床を確保するという方針を打ち出した。しかし、地方医療院からは「身勝手だ」という不満の声まで出ている。 地方医療院などの公共病院は、新型コロナの流行初期に感染症専門病院に指定され、一般病床を空けた。当時、一般患者および一般患者を担当していた医療スタッフの多くが公共病院を離れた。エンデミックに転換された後も患者は戻ってこず、廃業に追い込まれているところが多い。政府は損失に対する「十分な国庫支援」を約束したが、実際には違った。6~12カ月の回復期損失(期待診療費から実際の診療費を除いた金額)を補償し、別途に今年「公共病院経営革新支援事業」として876億ウォンを支援する。しかし、損失を埋めるにははるかに足りなかった。仁川医療院のチョ・スンヨン院長は「銀行からお金を借りて月給を払っている地方医療院も多く、もうすぐ月給も厳しくなる状況に直面するだろう」と述べた。さらに昨年、蔚山(ウルサン)と光州(クァンジュ)の地方医療院の事業が企画財政部の妥当性再調査で不合格となるなど、新しい公共病院の建設計画も相次いで頓挫している。 傷病手当の全国導入計画も先送りされた。傷病手当とは、業務と関連のない病気や負傷で仕事ができない時に休みながら治療に集中できるよう所得を支援する制度だ。当初は2022~2024年にモデル事業を実施後、来年から正式な事業に突入する予定だったが、2027年に延期された。尹錫悦政権の国政課題にも含まれていたが、任期内の施行は難しくなった。 これに対し、乙支大学医学部のナ・ベクジュ教授(予防医学)は、「新型コロナの大流行当時、公共医療の強化、病気になったら休む権利の導入などについての議論があったが、その時だけだった」とし、「新型コロナの再流行だけでなく、新しい感染症が拡散する可能性も大きい。医療災害に備えた議論を再開しなければならない」と述べた。 ソン・ジミン、キム・ユンジュ、シン・ソユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)