アメリカ大統領選…妊娠中絶をめぐる戦いがハリスに勝利をもたらすか(シェリーめぐみ)
【ニューヨークからお届けします】 大統領選を目前に、人口妊娠中絶の可否をめぐる戦いがさらに激しくなっています。 赤ちゃんが欲しいなら「AMH検査」…妊娠できる残り時間を推測 民主党候補のハリス氏は中絶容認派、対する共和党のトランプ氏は反対派です。 投票日が近づくにつれ、現行のあまりに厳しい禁止法に対し特に女性や若者からの反発が強まる中、共和党の政治家の中には、票を失うのを恐れて、できるだけ問題から距離を置こうとする動きさえ出ているほどです。 アメリカでは1973年から約50年間、中絶は憲法で保障された女性の権利でした。しかし2022年の最高裁判断で「中絶の可否はそれぞれの州議会に委ねられるべき」という判断が下されたたために、現在アメリカ50州のうち、保守共和党議会が権力を握る14州で、中絶は事実上の全面禁止となっています。 中でも今注目を集めているのは、この春フロリダ州で施行された新たな法律です。この法では女性は妊娠6週間までの中絶が許されているとはいえ、事実上は全面禁止と同じです。なぜなら6週間までに妊娠に気づく女性は非常に少ないからです。 女性が妊娠したかどうかは、4週間に1度の生理が来ない時点で気づくものです。実はこの6週間の数え始めは、最後に来た生理の初日です。つまり、生理が2週間遅れているなと気づいた時点で、もう6週間経っているわけです。男性にはわかりにくいかもしれませんが、生理が体調やストレスによって遅れるのは、珍しくありません。 もし違法に手術を受けた場合は、患者にも医師にも罰金から禁錮刑までの厳しい罰則が課されます。 もう1つ大きな問題は、こうした罰則を恐れた医師が、他の妊娠治療にも消極的になっていることです。中絶容認の例外として「母体が命の危機にさらされている場合」というのがありますが、命の危険がどれほどかを判断する基準は曖昧です。 そこで刑事責任を問われるのを恐れ、医師や病院が治療を拒否するケースが少なくありません。つい最近、医師の判断により中絶手術を受けられなかった女性が命を落としたニュースが大きく報道され、女性や若者を中心に有権者の怒りが燃え上がりました。 女性の人権である中絶保護を強く打ち出すハリス氏が、経済発展と移民問題を約束するトランプ氏に打ち勝つことができるのか? それにしても妊娠中絶が経済や移民問題と同列に扱われる異常さが、今回の選挙の異常さを象徴しています。 (シェリーめぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)