ゼロ戦元パイロット原田さん映画化など戦争映画特集 長野の映画館で今夏
戦争を知らない世代が「衝撃を受けて帰る」
他の作品では「野火」がフィリピン戦線で米軍の砲火に追われ野戦病院にも入れず山野をさまよい歩く兵士の極限状況を描きます。「陸軍」は、戦時中の軍の依頼で製作された作品で戦意高揚の国策映画の色合いをまといながらも、時には反戦を意図しているのかと疑わせる場面が注目される作品。木下恵介監督が戦時下に軍の監視下にありながらどのような製作意図で臨んだのかが今も関心を集めています。 「二十四の瞳」は、戦後間もない1954(昭和29)年の作品で、戦争体験がまだ生々しく人々の生活に陰を落としていた時期の作品。10代の少年たちが戦争に駆り出されていった現実は映画の中でも戦場から帰らぬ教え子の少年たちとして描かれ、上映当時多くの人の涙を誘いました。当時、都内の小学校などでは5、6年生を映画館に引率してこの映画を観賞させることもありました。平穏な学校も戦争と無縁ではないという現実を平和教育の教材とする狙いだったとも見られています。 現代の若者の多くはその事件すら知らないと思われるシベリア抑留に目を向けた「記憶の中のシベリア~」。祖父の抑留体験を知った孫が平穏な毎日の暮らしの中からその記憶を描き出す。世代を超えたつながりは戦争の記憶をいつまでも引き継いでいくことを示しています。 長野松竹相生座・ロキシーの田上真里支配人は「『~元ゼロ戦パイロットの100年』の観賞は中高年の方が中心ですが、若者の姿もあります。今だからこそ見なければ、見てよかったという感想が聞かれます。『野火』を見た若い人たちは戦争を知らない世代でもあり衝撃を受けて帰る人が多いですね。戦争を知ることの大切さを知ってもらえればと思います」と話しています。
-------------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説