阪神ルーキー、江越の決勝3ランの裏に「掛布の教え」
掛布氏は打撃練習で奇想天外な指示を出した。 「三塁コーチに当たるようなファウルを打て!」 「フルスイングするな、ゆっくり振れ!」 「左膝をやわらかく」の3点だけだった。 掛布氏が、その狙いを説明する。 「グリップが体より前に出すぎてヘッドが出てこなかった。本来、手首はヘソの前で返してヘッドもそれに合わせて返ってこなければならない。それができていないので、左方向への強い打球が飛ばなかった。 グリップを返す場所とヘッドが返る感覚をつかむために、まず三塁のコーチャーズボックスあたりにファウルを打たせた。リストと上体が強いのが彼の特徴だが、それがマイナスに出ていた。そのために力を抜くスイングを同時に心がけさせた。 フォームを固めるためには、まず頭で考えて意識して次に体で覚えるもの。頭で考える段階では、5割、6割で振ればいい。それと、左足のつま先が一塁側を向きすぎて、窮屈で左膝が柔らかく使えていなかった。軸は、しっかりとしている選手なので、その感覚も、ゆっくり振ることでつかんでもらいたかったのだが、非常に飲み込みが早く、対応力があった。ゆっくり振ってもオーバーフェンスする力があるんだから」 掛布氏がマンツーマンで指導する中、左方向への角度のある打球が増え始めたという。 「まだ時間はかかると思うけれど、今日のホームランは、彼が今取り組んでいる形が結果として出た。何かをつかむきっかけになればいいと思う」 江越も「ファームで、キャンプのときのバッティングを思い出せとも、掛布さんに言われ、もう一度、バッティングを見直す、いいきっかけになりました」という。 たかが1号、されど1号。打撃では揺さぶりへの対応、守備にもスタートなどにまだまだ課題は山積みのプロ1年生ではあるが、大和の不振でセンター不在だったチームにとっては、明るい材料。江越の活躍に対右腕では、先発起用されている伊藤隼太(25)や、ファームで首位打者をキープしている中谷将大(22)らが、刺激を受ければ戦力の底上げにつながっていくだろう。 「これを自信にして明日からもチームの勝利に貢献したい」 ヒーローは謙虚に語った。