新型アコードはホンダの理想を追い求めたセダンだった!!! かつてのヒット作は今
ホンダ車のなかで最先端のインフォテインメントシステム
今回の新型アコードは、2021年に「レジェンド」がラインナップから落とされたあと、ホンダのフラッグシップの位置づけだ。ブラックのレザーシートをはじめ、内装は落ち着きがあり、ホイールベースは2830mmもあるため、後席スペースも余裕たっぷりだ。 私にとって興味ぶかかったのは、“ホンダ車のなかで最先端”というインフォテインメントシステムのデジタル技術だ。12.3インチのモニタースクリーンの下に「エクスペリエンスセレクションダイヤル」と、名付けられた回転式のダイヤルが据え付けられている。 これをまわすことで、急速冷房、急速暖房、時計、各種設定、登録したドライバーごとの設定などが呼び出せるようになっている。それらを選び。押すことで、各種モードが起動する。 ワンタッチではないけれど、Google アシスタントを使っているため、音声によるコマンドも受け付けてくれる。使い勝手はけっして悪くなかった。 おもしろいのは、同じようにGoogle アシスタントを使っているボルボ車などと、ソフトウェアの一部を共用することもあるという指摘だ。 ボルボ車のオーナーが「オーケイ、グーグル」の発語のあと要求するコマンドに対するレスポンスに改良の余地があり、それに対処がほどこされると、アコードのオーナーもその恩恵にあずかれるんだそうだ。車両の情報など重要な部分は吸い上げられて共用されるようなことはないそうだ。 アレクサは、いまのところ、北米に限られるとのことだけれど、「機能は日進月歩」と、ホンダの担当エンジニアの言葉のように、今後、機能向上も見込まれるのではないだろうか。 ドライブモードで「スポーツ」を選ぶと、室内のライティング(LEDのバー)が赤色になるなどの演出もある。BMW車ほどの凝り方ではないけれど、544万9400円のアコードに乗る人にとって、いまの段階では十分な使い勝手だと思う。 新型アコードが搭載するパワーユニットはスポーツe:HEVと呼ぶハイブリッドだ。低速から高速にいたるまでスムーズな加速をたっぷり味わえる。新型ではくわえて、スムーズさがあらゆる場面で追求されたようだ。 アダプティブダンパーシステムによるフラットな乗り味をはじめ、回生ブレーキの強弱を6段階にコントロールできる「減速セレクター」、気持ちよいコーナリングを実現する「モーションマネージメントシステム」……これらもスムーズな走りに貢献しているようだ。 「モーションマネージメントシステム」は、カーブを曲がるとき(加速および減速時ともに)エンジントルクを制御して(いわゆるピッチングのような状態をつくることで)前輪への荷重を増やしてグリップを増し、スムーズなコーナリングをもたらすというもの。 こういうドライビングの印象が、インテリアの作りとあいまって、独自の快適性を追求しているのが新型アコード。「セダンであってセダンではない」というメーカーの主張を体験する価値があるかもしれない。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)