タピオカティーで「文化盗用」? TVを発端にSNSが炎上 世界で人気の台湾発ドリンク裏話
元祖をめぐっては10年に及ぶ裁判も、人気があるがゆえの「騒動」
爽やかさと不思議な食感で人気のタピオカティーは、台湾が輸出した最も有名な文化的商品の1つだろう。英語では「バブル(泡)ティー」とも呼ばれている。太いストローでお茶と一緒に吸い上げて飲む、カップの底に沈んだ甘くもちもちとしたタピオカの粒が泡を思わせるからだ。 ギャラリー:タピオカティーで「文化盗用」? 世界で人気の台湾発ドリンク裏話 写真4点 先日、タピオカティーをめぐりソーシャルメディアで炎上騒ぎが巻き起こった。発端は中国系カナダ人俳優のシム・リウ(劉思慕)氏が、タピオカドリンクの発祥の地である台湾のタピオカを見下した経営者をテレビ番組内で非難したことだった。文化の盗用ではという批判も飛び出した。 1980年代、台湾の伝統的なティーハウスで誕生したタピオカドリンクは、現在、台湾の至る所で売られている。店のほとんどは座って飲む場所というよりは、すばやく商品を提供する持ち帰り専門店だ。 それ以来タピオカティーは世界中に広まり、ドイツのベルリンからブラジルのブラジリアまで、あらゆる場所で専門店がオープンしている。さらにタピオカはバラの香りがするラテや、ピザのトッピングなどミルクティー以外にも使われている。
台中市と台南市の2店が元祖を主張
コリコリとした豚耳や、ぷりぷりのフィッシュボールなど、台湾料理は味だけでなく、食感も重視する。食後には、ぷるぷるとした歯触りのスイーツを氷の上やシロップに浸して食べるのが長年の定番だった。 タピオカティーがこの世に誕生したのはおよそ40年前。台湾中部の台中市にある春水堂と、南西部の台南市にある翰林茶館の2店が共に1986年にタピオカティーを発明したと主張している。 「アイスティーを飲むようになった頃、いろいろな飲み方があることに気付き、他にどんな飲み方ができるのか父が考え始めたんです」と、春水堂の創業者の娘であるアンジェラ・リウ氏は言う。リウ氏によると、さまざまなトッピングをアイスティーに加え、食感を試すよう創業者の劉漢介(ハンチエ・リウ)氏がスタッフに命じたところ、1人がタピオカを加えてみた。それがタピオカティーになったという。 一方、翰林茶館の創業者が着想を得たのは市場の屋台で売っていたお菓子だった。「彼はちょうど店で出すお茶をもっと付加価値の高いものにしたいと考えていたところでした」 「そんな時に目にしたのが、お婆さんが屋台で売っている砂糖水に浸したタピオカでした」と、翰林茶館でオペレーション担当マネージャーを務めるジャック・ホアン氏は言う。「砂糖水でなくてもいいはずだと考えた創業者は、タピオカをお茶に加えてみたのです」 いずれの話も真実であることを証明する術はない。しかし、どちらがタピオカティー発祥の店であるかを巡り、2店は10年もの間裁判で争うことになる。 2019年、ついに判決が下る。タピオカティーは特許取得製品ではないため、どちらが元祖であるかを論じるのは的はずれ、というのが裁判所の結論だった。