新国立劇場『デカローグ1~10』【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】
チラシとは観客が最初に目にする、その舞台への招待状のようなもの。小劇場から宝塚、2.5次元まで、幅広く演劇を見続けてきたフリーアナウンサーの中井美穂さんが気になるチラシを選び、それを生み出したアーティストやクリエイターへのインタビューを通じて、チラシと演劇との関係性を探ります。(ぴあアプリ「中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界」より転載) 【全ての写真】新国立劇場のプロデューサー茂木さん、営業部宣伝担当の高橋さん 十篇の物語を5プログラムに分け、4月から7月にかけて3期にわたって連続上演していく『デカローグ1~10』。一篇約1時間×十篇、まさに連続ドラマのようなこの公演を伝えるため、公演全体を貫くチラシと、個別のプログラムのチラシ3種、計4種類のチラシが作られました。全体チラシで光る窓の内側が、個別チラシに描かれる……。この凝ったチラシを生み出したデザイナーの柳沼博雅さんと、新国立劇場のプロデューサー茂木令子さん、営業部宣伝担当の高橋美奈子さんにお話を聞きました。 中井 柳沼さんは新国立劇場のチラシをいつから手掛けるように? 茂木 新国立劇場の演劇部門のチラシは2023/2024シーズンから、ふたりのデザイナーの方にお願いしていて、作品ごとにどちらのテイストが合うかを検討して都度ご相談しています。柳沼さんはシェイクスピアの『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』が初めてで、この『デカローグ』が2作めですね。 中井 最初にお話が来た時はどう思いましたか? 柳沼 光栄でした。 茂木 「面倒な話が来たぞ」と言われなくて良かったです! 柳沼 新国立劇場の演劇チーフプロデューサー・太田衛さんがアートスフィアにいらした際にお世話になっていて、今回も声をかけてくださいました。以前からたまに声をかけていただくものの仕事に繋がらない、ということがあったので、今回ようやく実現できて気合が入りました。 中井 やっと実を結んだ、というわけですね。この『デカローグ』、私が最初に手に取ったのは全体のチラシだったと思います。 高橋 全体のチラシと、4月に上演される「デカローグ1~4」(プログラムA・B)のチラシの2種類を同時にリリースしました。でも、お客さまには全体をまず知っていただく必要があるので、全体チラシを多く撒きました。 中井 『デカローグ』を手掛けると聞いたとき、柳沼さんはまず何から取り組みましたか? ワルシャワの団地に住む人々を描いた十篇の連作集という、演劇にしては変わった形式だと思いますが。 柳沼 まずは『デカローグ』の映像作品を全部観ました。打ち合わせのときに小説版もいただいたので、それも読みました。大枠は打ち合わせの際に芸術監督の小川絵梨子さんがお話しくださって。 高橋 そうそう。柳沼さんは打ち合わせで2時間くらい小川監督の話を聞いていただいて、その場でビジュアルを描いてくださいましたよね。 茂木 でも、全体チラシ+個別チラシ3種という形に至るまでにはけっこう悩んだ記憶があります。行きつ戻りつしながらいまの形になりました。