ポーターが新「タンカー」の顔に採用、“社運を賭けた”新素材開発の裏側に迫る
吉田カバンが手掛ける「ポーター(PORTER)」が、2023年で誕生40周年を迎えたブランドの代表的シリーズ「タンカー(TANKER)」をこの春リニューアルした。ブランドの代名詞として長年愛されてきたアイテムたちは、「ALL NEW TANKER -何も変わらず、何もかもが変わる-」をテーマに、素材やデザイン、ディテールを刷新。なかでも今回のリニューアルを象徴するのは、新タンカーの素材として採用した、日本を代表する合繊繊維メーカー 東レとの協業によってカバン用途として世界で初めて量産化に成功したという、100%植物由来のナイロン「エコディア(R) N510」だ。 【写真】新「タンカー」の製品
世界に先駆けた新素材を用いた新生タンカーは、価格が従来の約2倍になったという。「お客様にとってのメリットは本当にあるのか」「ただのブランドのエゴではないのか」――そんな自問自答も経た上でポーターが出した答えは、「変わり続けなければ、変わらずに残ることはできない」というもの。これまでブランドを支えてきた主力のアイテムを敢えて「変える」という選択は、ブランドの今後の行末を左右する、ある意味“賭け”とも言えるほどの大きな挑戦となりうる。けれども、繊維メーカーと製品メーカーが直接タッグを組むことは本来珍しい中で、同社が素材の開発段階から携わっていることからも、その本気度の高さがうかがえる。 今回は、そんなポーターがプライドと社運を賭けて東レと共同開発し、カバン用途として世界初の量産化を実現したという「100%植物由来のナイロン」誕生の裏側を探るべく、愛知県名古屋市にある東レの愛知工場を訪問。新生タンカーの要となる画期的な素材はいったいどのようにして生まれたのか、通常はなかなか見ることが叶わない最先端の開発現場とその背景をレポートする。 名古屋駅から車で約10分、名古屋市の中心部に近い場所に位置する愛知工場は、1941年に誕生した歴史ある工場。1951年に日本で初めてナイロン糸の生産を開始して以来、現在もナイロン糸の生産・技術開発拠点として、リサイクル・バイオベースナイロンなどの環境配慮型素材や高機能素材の生産および開発を行っている。今回工場を案内してくれたのは、100%植物由来のナイロン「エコディア(R) N510」の開発を担当した、東レ 愛知フィラメント技術課の兼田千奈美さん。入社5年目ながら、ポーターとの協業プロジェクトに携わったという兼田さんに、ナイロンにまつわる基礎知識やバイオベースナイロン量産化成功の裏側について話を聞いた。