夜が明けると中国船団に囲まれていた!フィリピン軍補給船団の〝攻防〟8時間 上空に米軍機が旋回、現場取材で感じた「本物の緊張感」
米中両軍がにらみ合う南シナ海の対立の最前線、アユンギン礁(英語名セカンド・トーマス礁)の緊張感は本物だった。11月8~11日にかけ、同礁のフィリピン軍拠点に向かう補給船を護衛する巡視船「メルチョラ・アキノ」に同行取材した。夜が明けると、中国船団に囲まれていた。まるで映画のようだった。その後、8時間にわたって続いた執拗な進路妨害。海上で威圧を張り合う危険なゲームのように感じた。 【写真】中国海警局の船がフィリピン側の船に衝突した場面
今回の補給任務に対し中国が展開したのは過去最多の38隻。うち5隻は病院船を含む軍艦で、遠巻きに配置してフィリピン側を威嚇した。中国海警局の艦船の上空を、フィリピンを支援する米軍の偵察機が旋回し、にらみを利かせる。米国は南シナ海でフィリピンの公船が攻撃されれば防衛に加わると警告しており、偶発的衝突の恐れも懸念されている。(共同通信マニラ支局 マリカー・シンコ) ▽「異例の態勢」狙いは 私が乗船した巡視船メルチョラ・アキノはフィリピン沿岸警備隊で最大。日本の円借款で建造し、昨年引き渡された全長97メートルの巡視船2隻のうちの1隻だ。沿岸警備隊にとって日本は最重要の協力相手。同型の5隻の追加供与も受ける見通しになっている。 海軍がチャーターした補給船2隻を拠点に送り込むため、警護を担う沿岸警備隊は今回、メルチョラ・アキノのほか、同じく日本製の44メートル級2隻を含む巡視船計3隻を投入した。これまでは44メートル級2隻だったことが多く、異例の態勢。中国側の「注意を分散させる」(乗組員)のが狙いだ。
さらに沿岸警備隊は、中国の「極めて無謀で危険な嫌がらせ」を訴えるため、国内外のメディア16社に同行取材を認めた。補給任務でこれほど多数の報道陣を受け入れたのは初めてだ。 ▽「戦い」前日、落ち着かぬ記者 記者らは巡視船3隻に分乗。メルチョラ・アキノは南シナ海を臨むフィリピン西部パラワン島の中心都市プエルトプリンセサ沖の停泊地を11月9日午前9時に出発した。記者や乗組員らは携帯電話が通話圏外になる前に会社や家族に連絡しようと、電波が届く船尾に集まってきた。 「また戦いになるだろう」。若い沿岸警備隊員が母親と思われる女性に話しかけている。「そんなこと言わないで」との女性の声が漏れ聞こえる。隊員は「でも今回はメディアも同行している。心配しないで。怖くないよ」と説得する。 そんな会話を聞いていると「万が一、私に何か起きたらどうしよう」と感情が高ぶってきた。私も無性に家族に電話したくなった。私は前日、過去の補給任務の記録を読みあさっていた。10月には補給船団が中国の船に衝突されている。中国は今回、何をしてくるのだろうか?