【MLB】MLB機構が投手の故障に関する報告書を発表 主な原因は球速上昇か 16年間で平均3マイル上昇
日本時間12月18日、MLB機構は投手の故障に関する報告書を発表した。MLBでは近年増加している投手の故障について調査するために、元選手、整形外科医、スポーツ医学の医師、生体力学者、現役の投手コーチ、アスレチック・トレーナー、フロントオフィスの幹部、代理人、球団組織外の投手育成コーチ、アマチュア野球関係者など、200人以上から意見を収集。MLB機構は今回の調査結果について「これは第一歩だ。選手を安全に育成するための、正しい方向性を示す重要な第一歩になるだろう」としている。 2024年オフシーズンの移籍情報まとめ 米公式サイト「MLB.com」では、スタットキャストのデータ解析を得意とするデービッド・アドラー氏が今回の報告書について、要点を整理している。まず、投手が故障する主な原因として【1】より速いボールを投げようとすること、【2】ピッチデザインのなかでより「エグい」ボールを投げようとすること、【3】出力の最大化を目指す流れがあること、という3点が挙げられた。 2008年と2024年のデータを比較すると、4シームの平均球速は約3マイル上昇(91.3→94.2)。スライダーも約2マイル、カーブとチェンジアップに至っては4マイル近く上昇している。これと比例するように、トミー・ジョン手術の件数も増加。もちろん、球速だけでなく、回転数や回転軸など、より質の高いボールを追求することが投手への負担を高めている。故障の原因については、多くの関係者の意見が一致したようだ。 また、投手の故障件数や故障者リストで過ごす日数も着実に増加している。近年はジェイコブ・デグロム、スペンサー・ストライダー、シェーン・マクラナハン、シェーン・ビーバー、大谷翔平といった大物投手の故障が相次いだため、投手の故障が劇的に増加したような印象を与えたが、あくまでも長期的な傾向の一部に過ぎない。 ただし、2021年以降を見てみると、スプリング・トレーニング期間中の故障は増えているが、シーズン中の故障は減少している。つまり、投球解析などによって各球種の質を上げることに重点が置かれ、オフシーズンのトレーニングの強度が上がることによって、故障が誘発されている可能性があるというわけだ。元選手は「球速を上げたり、変化球を身につけたりするためには、休むヒマなんてない。オフシーズン中に努力しないと、ほかの選手に追い越されてしまうんだ」と話している。 さらに、MLBでのトレンド(球速アップや回転数の上昇)はアマチュア野球にも影響を与えており、95マイル以上の速球を投げる投手の数は劇的に増加。その結果、アマチュア野球でも投手の故障が増加し、プロ入り前にトミー・ジョン手術を受けた経験のある選手も増えている。それを踏まえ、アドラー氏は「投手の故障を減らすための改革は、プロとアマチュアの両方で実施される必要がある」との見解を示した。 今回の報告書では、プロ野球に対しては「先発投手が健康に、より長いイニングを投げることの価値を高め、短いイニングを全力投球することの価値を低減させる」ようなルール変更を検討することを提案している。一方、アマチュア野球に対しては「若い投手により多くの休息と回復時間を与えること」を奨励した。今回の報告書は投手の故障を減らすための第一歩にすぎず、今後もプロ・アマチュアを問わず、球界全体で様々な議論が行われていくことになりそうだ。