いつの間にか深刻化していた「異常気象」の恐怖
「できることをやる」しかない
もちろん、いかなる巨大災害がいつ襲ってくるのか確定的なことは誰にもわからない。「1000年に一度」の大災害に遭うならば、そのときに生活している人は「運が悪い」のかもしれない。 ただ、先人たちが残した教訓を活かし、生き抜くだけの情報と準備、対策が備えられていれば多くの命は救われるはずだ。要は、正しい知識や教訓を「知っているか」。それを元に「備えているか」が問われる。 首都直下地震と南海トラフ巨大地震、富士山の噴火がほぼ同時期に発生する「大連動」が生じれば、我が国だけではなく、地球上でどの国も経験したことがない非常事態が訪れるだろう。自衛隊や警察・消防は大量動員される計画が立てられているが、同時多発の事態は想定されてはいない。「絵空事」で済めばよいが、地球が変化し続ける以上は「大連動」が生じる可能性はゼロとは言い切れない。そのときに隣国から攻撃に遭ったり、風水害に襲われたりすれば──。 間違いなく言えることは、世の中に「絶対」はないということだ。いかに人間が万全を期したと思っていても、自然の力はそれをあざ笑うかのように上回る。そのような地球で暮らすことの“宿命”を踏まえるならば、国や自治体、そして国民一人ひとりが「できることをやる」しかないのだ。 第7代の東京市長を務めた後藤新平氏は「人のお世話にならぬよう 人のお世話をするよう そして、報いを求めぬよう」という言葉を好んで使った。後藤氏の思いは、人間関係が希薄化しがちな今日の私たちに突き刺さる。 あなたには自らの備えと同時に、大切な人の命を守る覚悟ができているだろうか。本書『首都防衛』で記した教訓や備えなどが少しでも皆さんの準備や心構えにつながれば幸甚である。国や東京都、自治体は「首都防衛」に全力を尽くす。皆さんが築き上げる「防衛力」が次の100年につながることを願っている。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)