【インドネシア】プラボウォ新大統領が就任 10年ぶり交代、食料エネ自給訴え
インドネシアで20日、プラボウォ・スビアント国防相が第8代大統領に就任した。2期10年の任期を満了したジョコ・ウィドド前大統領の路線継承を掲げるプラボウォ氏は同日に首都ジャカルタで行われた就任式の演説で、食料安全保障、エネルギー自給率の向上を優先事項に挙げた。貧困問題などの国内課題に目をそらさず取り組むとも強調した。インドネシアは2045年の先進国入りを目指しており、安定的に経済成長を続ける新興国として存在感を増している中で、一次産業を中心に産業の強化と福祉の改善を重点的に訴えた。 プラボウォ氏は就任演説で、20カ国・地域(G20)の一員であるインドネシアの経済規模は世界16位だと言われているが「国内の貧困問題は依然として深刻だ」と訴えた。十分な栄養を摂取できていない子どもや、安定した職に就けない国民が多くいると述べ「現実の課題を直視しなければならない」と強調。演説中に複数回貧困問題に触れ、解決に向けた決意を示した。 プラボウォ氏は食料を輸入に依存する状態から脱しなければならないと述べ、早期に食料自給率を高める考えを強調。プラボウォ氏は「4、5年後には食料自給を達成できると信じている」と意欲を示した。 またプラボウォ氏はエネルギー自給の必要性にも言及。紛争など外的要因からエネルギー源が確保できなくなる状況も想定しなくてはならないとした上で、国内で生産するアブラヤシ、キャッサバ、サトウキビ、サゴヤシ、トウモロコシを燃料として使用できるほか、国内に豊富にある地熱、石炭、水力エネルギーを活用することでエネルギー自給を目指すとした。鉱物資源などの高付加価値化の推進にも触れた。 選挙公約にも掲げていた汚職対策については「汚職は国の将来を危険にさらす」と指摘し、デジタル技術の活用と法執行を強化し汚職による腐敗を減らしていくとした。 ■非同盟外交の原則は堅持 外交方針について、プラボウォ氏は非同盟外交の原則を強調し「インドネシアはすべての国にとって良き友人となる道を選ぶ」と述べた。一方、過去の経験から反植民地主義を掲げていると説明し、現在、武力攻撃が続くパレスチナの独立を改めて支持すると表明した。 プラボウォ氏は演説終盤に「自分のためではなく、国民のために働かなければならない」と呼びかけ、45年に世界五大経済大国となるためのビジョン「黄金のインドネシア」の達成に向け、強靭(きょうじん)かつ公平な国づくりを目指すとした。 就任式には海外からシンガポールのローレンス・ウォン首相や、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相、中国の韓正(かん・せい)国家副主席、韓国の韓悳洙(ハンドクス)首相、米国、中東諸国などから代表者が列席。日本からは高村正彦元外相が出席した。 歴代の大統領では、スシロ・バンバン・ユドヨノ第6代大統領が出席した。また、2月の大統領選挙で争ったアニス・バスウェダン氏(ジャカルタ特別州前知事)と副大統領候補としてペアを組んだムハイミン・イスカンダル氏(国民覚醒党党首)も参列した。このほか国民協議会(MPR、国会議員と地方代表議会議員の合同会議)議員らが出席した。 2期10年の任期を終えて退任したジョコ前大統領は20日午後、ジャカルタのハリム空港から中ジャワ州スラカルタ(ソロ)市に移動した。 プラボウォ氏は24年2月の大統領選挙で、ジョコ氏の長男ギブラン・ラカブミン氏を副大統領候補に据えて出馬し当選。選挙戦では、前政権の方針を継続することや学校給食の無償化を目玉政策の一つとして掲げ、得票率58.6%で勝利した。