減少する語り手… 修学旅行で「平和」どう学ぶ?現地の学生もガイド役に
進む当事者ガイドの高齢化。課題への取り組みは
ーー探究型の平和学習とは、実際にどのようなプログラムなのでしょうか。 一例として、長崎市で行われた事例を紹介します。 このプログラムでは、まずオンライン形式での事前学習で長崎の歴史などについて学びます。 修学旅行当日は、原爆資料館を見学したあと、平和ガイドとともに原爆遺構を巡ります。その後、長崎での平和推進の取り組みやその課題についてレクチャーを受け、平和ガイドやホテルのスタッフがファシリテーターとなり「平和を実現するために、自分たちに何ができるか」をテーマにグループディスカッションを実施。そして、グループごとにその内容をまとめて発表し、それぞれの意見を共有します。 さらに事後学習では、学んだ内容をさらに深め、文化祭で発表するといった活動も行われています。
ーー現地の平和ガイドとは、どのようなかたなのでしょうか。 普段から被爆遺構巡りを案内している平和ガイドの中には、戦争を体験されていない市民もおられます。これは戦争体験を語る当事者ガイドの高齢化が進み、少なくなっているという課題に対応するものです。 平和ガイドは、被爆の歴史やファシリテーションについての研修を受けています。見学やグループディスカッションをとおして、自分とは立場の異なる人の感じ方や考え方に直接触れ、交流できることは大きな刺激となるはずです。友人と交流するだけではともすると同質化しがちな見方を広げたり、深めたりすることもできるでしょう。 他のエリアでは、現地の学校の中高生や、少し上の世代がガイドを務めるケースもあります。たとえば、舞鶴引揚記念館(京都府)では中高生が、普天間(沖縄県)では沖縄国際大学の学生がガイドをしています。年齢が近いガイドとの交流も、生徒には大きな刺激となるでしょう。 ーーこのようなプログラムは、生徒たちの今後の学びに、どのような影響を与えていくと思われますか。 単発の学びではなく、継続的な学びのテーマになっているようです。 ある学校は、平和学習プログラムへの参加をきっかけに地元の平和学習に取り組むようになったといいます。探究的な学習は、課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・表現というプロセスを経ることで、また新たな課題を発見していくというように、螺旋(らせん)状に学習がつながっていくものです。学びの点でも、そして平和について考えるうえでも、修学旅行での体験にとどまらず、長く向き合っていく仕掛けが大切だと思います。 (出典) ※1 公益財団法人日本修学旅行協会「教育旅行年報データブック2024」(抜粋)より
プロフィール 竹内秀一(たけうち しゅういち) 公益財団法人 日本修学旅行協会理事長。神奈川県立、東京都立の高等学校の日本史教諭、都立高等学校副校長を経て校長。都立高等学校の修学旅行実行委員会に所属後、現職。