【更年期のもの忘れ】「軽度認知障害」の可能性も!?認知機能を守る3つの対策
最近もの忘れが進んでいるような気がする…年齢を重ねるにつれて、記憶力や判断力などが変化するのは自然なことですが、それがあまりに気になるようであれば、「軽度認知障害」の可能性があります。認知症の一歩手前といわれる軽度認知障害ですが、今回はこの軽度認知障害とは何か、また、認知症へ進行するのを予防する方法について説明します。 <写真>【更年期のもの忘れ】「軽度認知障害」の可能性も!?認知機能を守る3つの対策 ■認知症の一歩手前の段階「軽度認知障害」 先日、このようなご相談をいただきました。 「このごろ忘れがひどく困っています。持っていかなければならないものを準備したのに玄関に忘れたり、2つやることがあると、そのうち1つは高確率で忘れます。認知症の始まりではないかと不安です。認知症の手前の症状ってあるのでしょうか。自分でできる対策があれば教えてください。」(50歳・女性) 認知症の一歩手前の段階、と言われているのが「軽度認知障害(MCI)」です。軽度認知障害は「MCI(Mild Cognitive Impairment)」とも呼ばれます。記憶や注意力、時間や場所の認識などの認知機能について、本人や家族が「何だかおかしいな」「これまでとは違うぞ」といった自覚があるものの、日常生活は特に問題なく送れる状態のことを指します。MCIは、認知症と完全に診断される一歩手前の状態とされています。放っておくと認知症に進行することがありますが、適切に対処することで、それ以上進行することを防いだり、元の健常な状態に戻ることもあります。もし認知症に進行すると、認知機能の低下が日常生活に支障を来すようになっていくため、早めの対策が大切です。 そこで今回は、自分でできる、予防ケア方法を3つ紹介します。 ■運動で認知症発症リスクが半減することも 1つ目は運動です。体を動かすことによって脳の血流量が増えたり、神経細胞が増えるとされています。また、運動によって脳の容積自体も大きくなることがわかっています。運動のなかでも、ウオーキングなどの有酸素運動がおすすめです。イギリスで7万8,000人が参加したある調査によると、1日に1万歩程度歩くことで認知症発症リスクが約50%低下することがわかっています。(*1) さらに運動する時間のうち、30分程度は少し強度の高い、負荷を上げた運動をするとよりよいとのこと。例えば、いつもより速度を上げた早歩きをしたり、いつもより1.5倍くらい広い歩幅で歩いてみるなど、簡単にできることでかまいません。30分でよいので、意識してみてください。ほかにも、頭を使う運動は脳が刺激されるのでとてもおすすめです。例えばその場でジャンプをするだけではなく、縄跳びのように道具を使ってみる。エアロビクスのような振り付けを覚える運動を取り入れる。リズムに乗って行うバランスボールエクササイズなどがよいでしょう。 *1 Association of Daily Step Count and Intensity With Incident Dementia in 78430 Adults Living in the UK JAMA Neurol. 2022;79(10):1059-1063. doi:10.1001/jamaneurol.2022.2672 ■いろいろなものを質・量ともにバランスよく食べる 2つ目は食事です。私たちの脳は総エネルギー摂取量の25%程度を日々消費しています。つまり、約4分の1が脳によって消費されるわけです。そのため、脳への栄養を不足させないことが大変重要になります。脳への栄養を不足させないためには何を食べればよいかというと、特別な食事が必要なわけではありません。量・質ともにバランスよくいろいろなものを食べることが鉄則です。たんぱく質を含む「主菜」、野菜や海藻類、きのこ類を使った「副菜」、米やパン、麺類などの「主食」を基本として、乳製品や果物も摂取します。 さらには、偏った食品を食べ続けるのではなく、さまざまな種類の食品を適量摂取することが大切です。例えば主菜のたんぱく質も、肉ばかりではなく、肉、魚、大豆製品、卵を偏ることなく食べましょう。また、抗酸化作用や抗炎症作用を持つ食品は忘れず取り入れるようにしたいものです。例えば、野菜や果物、魚などがあげられます。 ■生きがいを持つ 3つ目は生きがいを持つことです。認知症のリスクは、趣味がたくさんある人ほど低いと言われています。(*2) *2 高齢者の趣味の種類および数と認知症発症: JAGES 6年縦断研究. 日本公衛誌 2020;67(11):800-810. 人と関わること、外出すること、音楽を聞くこと、また、聞くだけではなく演奏をすること、踊ること、映画やテレビを見ること…。人との交流や頭を使う趣味はぜひ持っておきたいものです。こうした趣味や人との交流で人生を楽しむこと、それが長い目で見たときの生きがいにもなっていきます。 ■改善が見られない場合は受診を 今回紹介した対策をとっても認知機能の状態がよくならない、もしくは、認知機能の低下が不安な場合は、医療機関のもの忘れ外来や認知症外来などを受診しましょう。場合によっては、治療が必要なこともありますので、早めに医療機関の診察を受けることも大切です。歳を重ねるにつれて認知機能が低下していくことは、自然な変化でもあります。今回紹介した対策は、認知機能の状態に関わらず、更年期のあとも長く続く人生を元気に生きていくために大切なことばかりです。ぜひふだんの生活で心がけてみることをおすすめします。 ライター/永田京子 NPO法人 ちぇぶら代表理事、更年期トータルケアインストラクター 1,000名を超える女性たちの調査や医師の協力を経て “更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。口コミで広まり、企業や医療機関など国内や海外で講演を行い述べ3万人以上が受講。2018年カナダで開催の国際更年期学会で発表。
永田京子