「DNAの大半が”遺伝情報”を持たない理由」を完璧に説明する衝撃的な”発想の転換”…「遺伝子」は「人間」のために存在しているのではなかった!
「私たちが遺伝子のために存在している」
しかし、遺伝子の観点から考えると、そのような疑問さえ生じることはない。「遺伝子が私たちのために存在している」と考えた場合にのみ、有益な情報をもたない遺伝物質の存在が不可解に思える。 しかし、「私たちが遺伝子のために存在している」と考えれば、謎は一気に解消する。生存と生殖を確実にする指示だけあれば、私たちは複製の乗り物としての使命を果たせる。ほかの遺伝子も自動的に複製されるが、それは遺伝子にとってはどうでもいいことだ。それらに働きがあるかどうかを、遺伝子は気にしない。そもそも、役に立たないとは、誰にとっての話なのか? ここで、道徳的に称賛に値する行動パターンを、進化を通じて維持しつづけることがいかに難しいか、なぜ利他性と協調性が進化論的には不合理と思われてきたのか、もう一度思い出してみよう。 たとえ偶然の変異で協調性の高い個体が生まれたとしても、その個体が選択されることはないだろう。また、協調的な個体で構成される集団があったとしても、それが悪意ある者やフリーライダーによって内部から破壊されない保証はない。 なぜなら、長期的に見れば、遺伝子の組み換えにより協調性の高い個体が生まれることもあれば、協調性の低い個体が生まれることもあるからだ。その場合、協調性が低いほうが有利となり、次第に数を増やしていくだろう。結果、協調的な利他主義者は“必然的に”淘汰されると考えられる。非協力戦略の普及は免れない。 『我々人間が「子供」を愛するのは純粋に「子供のため」ではない…人が自らを犠牲にしてまで「親族」を助ける本当の理由』へ続く
ハンノ・ザウアー、長谷川 圭
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