<強く、前に・’21センバツ明徳義塾>春への軌跡/中 壮絶な投手戦、幕開け /高知
2020年9月、秋季四国地区大会県予選が開幕した。明徳義塾の初戦は20日、相手は高知商業。強豪校にも動じることなく、先発の代木大和投手(2年)は安定した投球を見せる。序盤こそ我慢の時間が続いた打線も終盤、中軸を中心にヒットを放ち、6―0の圧勝でスタートを切った。続く準々決勝の中村戦でも、一回から打者一巡する猛攻などで10―0の五回コールド勝利。1時間を切るスピードゲームでチームは力を見せつけた。ストライク先行でテンポ良く投げ完投した畑中仁太投手(2年)の球数は、わずか43球だった。 ここまでの2試合、磨いてきた制球力が光り、1年間の成長ぶりを感じさせた両先発投手。だが準々決勝後、畑中投手の肩に痛みが出たことで馬淵史郎監督は頭を悩ませることになった。 高知中央との準決勝も9―0と快勝し、迎えた翌10月11日の決勝。相手は新人戦で負けた因縁の高知だ。高知の先発は最速150キロ超えのエース・森木大智投手(2年)。馬淵監督は準決勝に続く代木投手の連投を選択し、試合前の取材で理由を語った。「昨日は90球くらいしか投げていないし、本人も『行けます』と言うので。連投でどれだけ持つのか試してみたい」 プロ注目の森木投手が決勝で登板することもあり、県立春野球場(高知市)のスタンドには球団スカウトを含めた大勢の観客が詰めかけていた。試合は高知の先攻。代木投手は一回、先頭打者の森木投手を三振に仕留めたものの、その後3連打を浴び先制点を許す。一方その裏、森木投手は序盤から150キロ超えの直球を連発。明徳義塾は打者3人で抑えられ、相手に良いスタートを切らせてしまう。 だが、ここから壮絶な投手戦が幕を開けた。森木投手はスライダーを交えつつ自慢の速球で強気な投球を続ける。代木投手は球速は抑えつつもコースを丁寧に投げ分け、変化球で三振を積み重ねる。明徳義塾が五回裏、山蔭一颯選手(2年)のスクイズで試合を白紙に戻すと、その後の展開はし烈を極めた。疲れが出始める終盤になっても、両投手とも一歩も引かない。お互い感情を前面に出し、まさに意地と意地がぶつかり合った。 チームはあの手この手で追加点をもぎ取ろうとするも、相手の好守備やミスで1点が遠い。夕日が選手たちを照らす中、ついに試合は延長十二回で日没引き分けとなった。大会規定により、午後5時を超えて新たなイニングに入ることができないためだ。2日後に再試合が行われることになった。互いに最後まで投げきった両投手が奪った三振はどちらも12、投球数は2人合わせて363球。「決勝が日没再試合になるなんて記憶がない」。県高野連の幹部は口をそろえた。馬淵監督も再試合の経験はないといい、「良い試合だった」と両校の選手たちをねぎらった。 異例の日没再試合に衝撃が走った春野球場。だが、2日後にはさらに驚くべき展開が待ち受けていた。【北村栞】