【Apex】ローンチロイヤル実装背景を開発に訊く。シーズン1の記録をもとに再現された懐かしのモード。開発「当時のウィングマンは正直強すぎた」
2024年11月6日(日本時間)より、『Apex Legends』(エーペックスレジェンズ)のシーズン23“フロム ザ リフト”が開幕。新シーズンでは、新たなモード“ローンチロイヤル”が実装された。 【記事の画像(3枚)を見る】 ローンチロイヤルは、『Apex』リリース当初の仕様でバトルロイヤルが楽しめる期間限定モード。マップは初期のキングスキャニオンで、レイスやブラッドハウンドをはじめ、オクタン、ワットソンまでの計8人のレジェンドのみが使用可能。クラスごとのレジェンドパークはなく、プレイヤーは装備や回復アイテムを持たずに降下するといった当時の環境を体験できる。 新モード“ローンチロイヤル”について、開発チームへオンラインインタビューを実施。ローンチロイヤルを実装した背景や初期の仕様に戻すうえで苦労したことなどをうかがった。 Evan Nikolich(エヴァン・ニコリッチ): 『Apex Legends』Design Director。(文中はエヴァン) Mike Button(マイク・バトン): 『Apex Legends』Mode & Events Lead。(文中はマイク) Eric Canavese(エリック・カナビス): 『Apex Legends』Lead BR Designer。(文中はエリック) Kevin Wolski(ケビン・ウォルスキー): 『Apex Legends』Senior Technical Game Designer。(文中はケビン) 初期仕様の再現に込めた思いとは? 開発「『Apex』リリース時のように、あえて告知せず導入しました。」 ――初期仕様のモードを実装しようと決めた理由には、どのような背景があったのでしょうか?: エヴァン : 『Apex』の開発や計画は、基本的には1年単位で考えています。そこで来年2025年のアニバーサリー前に、少しクラシックモードのような形で、最初に私たちがスタートしたときのゲームがどんなものだったかを新規プレイヤーにも見せたいと思い実装しました。そして昔からのファンには、当時からどれだけ進化したのかを実際に体感してもらう意図があります。 ――ローンチロイヤルは、古参プレイヤーにとって懐かしさを感じる、非常に魅力的なイベントだと感じました。このモードを事前に大々的に発表せず、サプライズとして導入した理由を教えてください。 エヴァン : 覚えている方もいらっしゃると思いますが、 『Apex Legends』を2019年に初めてリリースした際も、じつは大々的なプロモーションは行わず、サプライズのような形で登場させたんですよ。今回もそのときの感覚を再現したかったので、同じようなやりかたで導入しました。 ――どのように過去の仕様を実現しているのか知りたいです。保存している過去のデータを引っ張りだして、現在のパッチに実装しているのでしょうか? ケビン: もともとオリジナルのビルドは保管してあり、それを参考にしながら実装しています。また、シーズン1から現在にいたるまでの変更の履歴も記録しているので、それも指標にいろいろ調べながら進めていきました。 その中には、当時の武器の統計や修正前のレジェンドアビリティのデータもあったため、このモードは本当にオリジナルに近い、いわばローンチ時の体験そのものだと感じてもらえると思います。 ――初期の仕様を再現するにあたり、当時のデザインから何か変更せざるを得なかった部分はありましたか?: マイク: とくに何かを強いられたということはないです。というのは、もう当時の骨格はあってそこからどう料理していくか、どう調整していくかという話でしたので。 ケビン: 強制されたわけではないのですが、意図的に「この部分はオリジナルに戻さない方がいい」と判断して、現在の仕様のままでいこうと決めた部分はありました。 たとえば、武器を発射した際に出るマズルフラッシュや一部のUIエフェクト、またデスボックス内の表示などは大きな変更は加えていません。 というのもゲームが進化する中で、これらの変更がゲーム体験をよくする要素となっているためです。わざわざオリジナルの仕様に戻してプレイヤーに悪い体験をさせることは望んでいないので。 そのため、HPバーや先ほど言ったUIエフェクトなども、当時の仕様に戻すことで快適なゲーム体験が損なわれてしまうので、それは避けることにしました。 進化したゲーム体験とともにリリース当初のプレイ環境を振り返る ――全体的にプレイヤーのレベルが上がったいま、過去のキングスキャニオンでは昔と比べてどんな変化が見られると思いますか?: エヴァン: ゲームがリリースされてから約6年が経ち、プレイヤーどうしの戦いもかなり激しくなったと思います。とくに、ウィングマンは強力すぎるので、あまり乱用しないようにというアドバイスも出しています(笑)。ただ、やはりそのパワーが魅力的ですから、どうしても多くのプレイヤーが使ってしまうんですよね。 ――キングスキャニオンはこれまで何度も破壊や変化をくり返してきたマップだと思います。初期マップから現在までの変化を通じて、ゲーム性はどのように変わったと感じていますか? マイク: ひと言で言うと、いまのマップはかなりよくなったと言えます。当時のスカルタウンは戦闘が激しく、楽しい場面も多かったのですが、それと同時にいくつかゲーム性能の問題もありました。初期の状態と比べると格段に改善されていますね。 ただし、今回のローンチロイヤルはあくまで期間限定のイベントなので、当時の懐かしい思い出を振り返ってもらった後は、最新のモードを楽しんでいただければと思います。 ――ローンチ当初からG7スカウトやウィングマンの強さ、レイスが虚空に入るモーションなど、多くのバランス調整が行われてきましたよね。そうした調整を経て、当時の武器性能やレジェンドを振り返ったときに、やはり強かったなと感じるものがあれば教えてください。 エリック: 代表的なものを挙げると、武器のウィングマンですね。先ほども話しましたが、リリース当初はその強さがかなり際立っていて、正直に言うと強すぎた部分がありました。 レジェンドとしては、ブラッドハウンドですかね。初期のころはアルティメットでの移動が非常に速く、さらにスキャン能力もあったので明らかにゲームバランスを崩していたような気がします。そのため、ゲーム環境を健全に保つためにさまざまな調整を行いました。 その影響で、現在ではよりバランスの取れた環境になり、ほかのレジェンドにも活躍の場が広がったことは、ひとつの成果だと思います。 ――初期の仕様に戻してみて、開発者として新たに発見したことや意外だった点はありましたか?: マイク: いい質問ですね。これまでのデータの中から初期の部分だけを取り出し、ゲーム性のバランスを整える作業は難しかったです。ゲームがリリースされてから5年以上が経過し、そのあいだに多くのパッチが加えられ、さまざまな変更や調整が行われてきているので。 実際、当時のマップでプレイするにあたっても、レジェンドたちには多くの変更が加えられてきています。それらを一旦すべて解きほぐし、当時のマップでしっかりプレイできるように戻すという作業は非常にたいへんでした。 マップ自体に関しては、パッチや変更がレジェンドほど頻繁には行われていないので、どちらかというと調整は比較的容易だったと思います。この作業に割ける時間は非常に限られていたため、短期間でそれを仕上げ、現在のデータに落とし込むことができて本当に満足しています。 ――もし好評であれば今後、当時のワールズエッジやオリンパスなどのマップ再現も検討されるのでしょうか? エヴァン: そのときになったら考えるかもしれませんが、現時点ではお話しできることは何もありません。