[MOM4776]甲府U-18MF横森日々生(3年)_本職ではないCBと真摯に向き合う「お母さん的キャプテン」はしなやかにリーダーシップを発揮する!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [7.23 クラブユース選手権(U-18)GL第2節 大分U-18 1-2 甲府U-18 ヤンマーフィールド長居] 【写真】伊東純也ら日本代表トリオがパリ観光! サングラス&私服姿に「三つ子みたい」「まじで顔小さい」 本職ではないポジションだって、任されたからには100パーセントのひたむきさで真摯に向き合っていく。それはキャプテンという役割も一緒。少しでもこのチームを良い方向に導けるのであれば、左腕に巻いた腕章に想いを込めて、持てるものすべてをピッチへ注ぎ込む。 「この全国大会自体も自分たちの力で勝ち獲ったものですし、どこも良いチームばかりが集まっているこういう大舞台で、チームみんなで自分たちのサッカーができて、1勝できたというのは本当に嬉しかったです」。 ヴァンフォーレ甲府U-18(関東8)のセンターバックを預かる、不動のキャプテン。全国での勝利を仲間と喜び合ったMF横森日々生(3年=ヴァンフォーレ甲府U-15出身)がしなやかに発揮するリーダーシップは、個性派揃いのグループを最適な形でまとめ上げていく。 「昨日の試合が終わった直後はみんな落ち込んでいて、切り替えるのは凄く難しかったですけど、突破するためにはここから絶対に2勝しないといけないのはわかっていたので、うまく切り替えて、みんなで気持ちを上げてゲームに入れたのが良かったかなと思います」。 キャプテンは手応えを感じていた。初戦のガンバ大阪ユース(関西1)戦は0-2で敗戦。1位のみがノックアウトステージへと進出する大会レギュレーションのため、1試合の結果が勝ち上がりを大きく左右する中で、甲府U-18の選手たちはしっかりと気持ちを立て直して、この日の大分トリニータU-18(九州2)戦を迎えていた。 センターバックとして最終ラインを任されているものの、横森の本来のポジションはそこではない。「もともとボランチをやっていて、センターバックになったのは4月の初めぐらいからですかね。プリンスリーグが開幕してからはずっとセンターバックです」。本職ではない場所で、チームのために奮闘している。 内田一夫監督も苦しい胸の内をこう明かす。「ケガ人も含めたチーム事情で今は1つ後ろに下がってもらっているんですけど、守備もそうですし、ボールを動かすという面でも彼がいると安定するんです。本当は1つ前で使ってあげたいところなんですけどね」。葛藤も抱えながら、絶対的な信頼を置いて、ディフェンスリーダーを託しているというわけだ。 本人には少しだけコンバートの“予感”があったという。「去年もボランチの先輩がシーズン途中でセンターバックになっていたので、センターバックの選手がケガしてからは、『自分がやるんじゃないかな』とは思っていました(笑)。でも、センターバックをやることで学ぶこともあるので、そこは前向きに捉えてやっています」。 172センチと決して大柄ではないだけに、思考を駆使して相手フォワードと対峙していく。参考にしているのはトップチームのレジェンドだ。「オミさん(山本英臣)をイメージしていますね。オミさんもセンターバックとしてはそこまで大きくはないですし、自分と似たようなタイプかなとは思っているので、トップの試合を見に行く時は、そこに注目して見てみると、『やっぱり凄いな』って。プロでもあの身長でもやれているというのは、凄いなと思っています」。 「自分はあまり足が速くないですし、身長もセンターバックとしてはかなり小さい方なので、予測では相手に負けないように、頭を使って良いポジション取りをしたり、インターセプトすることは心掛けてやっているところです」。この日もチームメイトを丁寧に動かしながら、最後の局面では身体を投げ出して、大分U-18の攻撃を1つずつ凌いでいく。 前半はスコアレスで推移したが、後半に入ると甲府U-18は2点を連取。「前半はあまり自分たちのボールを作れなくて、我慢する時間が長かったですけど、そこでゼロで抑えられたことで、後半は自分たちの時間が増えてきて、自分たちがイメージしている形から点が獲れたので、それは凄く良かったかなと思います」。苦しい流れの中から狙い通りの展開に持ち込めた実感が、横森の言葉に滲む。 終盤にはPKで1点を返されるが、キャプテンはチームメイトたちと改めて残り時間で為すべきことを共有する。「もうPKになった時に、『なってしまったことは仕方がないから、次にできることをやろう』と。まだ1点リードがあったので、そこからもう1個ギアを上げて、身体を張って守ることは徹底できたんじゃないかなと思います」。ファイナルスコアは2-1。土俵際で踏みとどまる大きな1勝。仲間と作った歓喜の輪の中で、横森の顔にも大きな笑顔の花が咲いた。 チームメイトも横森の存在には一目置いている。「キャプテンということもあるんですけど、誰よりも声を出して、リーダーシップもありますし、ゲームを見る力も凄くあって、1人1人への接し方も上手で、そこは尊敬しています」(FW大倉彪真)「オフのところではみんなワイワイ元気にやっていて、ちょっとはしゃぎすぎることもあるんですけど(笑)、キャプテンの横森くんを中心に、うまくまとまっているかなと思います。横森くんはちょっとお母さん的な存在ですね(笑)」(MF保坂知希)。2人の言葉から、何となくその立ち位置が透けて見えるようで面白い。 勝ち点3同士で対峙するグループステージ最終節のモンテディオ山形ユース(東北1)戦は、多くのゴールを奪った上で勝利することが、準々決勝進出への最低条件になる。決して簡単なミッションではないことは百も承知。でも、やるしかない。横森が確かな決意を静かに口にする。 「もうあと1試合ですね。まずは上に行くためには絶対に勝つというのが条件で、プラスアルファで決められるところはしっかりゴールを決めて、得失点差も有利な方向に持っていけたらなと思うので、ラスト1試合、みんなでまとまって、全力で、100パーセント後悔がないようにやり切りたいなと思います」。 甲府U-18を優しく包み込む『お母さん的キャプテン』。横森日々生は自分を信じ、仲間を信じ、みんなで積み重ねてきた時間を信じ、勝利だけを見据えて、決戦のピッチへ逞しく立つ。 (取材・文 土屋雅史)
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