世も末か…景気が悪すぎる中国で、ついに「空の権利」が売却され始めた? その「奇妙な裏事情」
2024年の中国は「報復社会」
新年快楽(シンニエンクアイラー)! 中国で新年の挨拶は、たった4文字で済む。だが、もう少し書き足したい場合には、「恭喜発財(ゴンシーフアーツアイ)!」(金運に恵まれますように)と続ける。 【写真】「スマホをパクってるのは…」日本を代表する運送業者で起きている「異変」 ことほどさように、正月からカネのことを夢想する中華民族であるのに、昨年は「金運」に恵まれなかった。3年続いたゼロコロナ政策の後遺症や不動産バブルの崩壊などにより、経済が極度に悪化したからだ。 そのため、昨年の中国の「流行語大賞」を勝手に選ばせてもらえば、ズバリ「報復社会」だろう。失業者らが、社会を恨んで報復する無差別殺傷事件が相次いだからだ。9月には経済特区の深圳で、10歳の日本人児童も犠牲になった。
2025年の流行語は?
それでは、2025年乙巳の中国では、どんな流行語が生まれるだろう? 新年からそんなことを思い巡らしても時期尚早なのだが、今年流行語として定着しそうな言葉が一つある。「低空経済」だ。 それは、今年も昨年と同様、経済の低迷が続いていくという意味? いえいえ、違います。 社会主義国の中国は、憲法第10条の規定により、「都市の土地は国家の所有に属する」。そのためこれまで、当局が土地の「使用権」を不動産開発業者に切り売りすることで、税収にしてきた。これが各地方自治体の毎年の税収の3分の1から半分くらいを占めていたのだ。 ところがいまや、未曽有の不動産不況である。「鬼城(グイチエン)」と呼ばれるゴーストタウンが多くの都市に出現し、使用権を買い取ってくれる不動産開発業者も減っている。「白菜価(バイツアイジア)」(白菜と同じくらいの価格)と揶揄されるマンションを買い求める市民も少ない。
年6億で「低空」を売る
そこで中国政府は諸政策を講じてきた。昨年5月の「楼市新政」(不動産の4つの改革)から始まって、11月の「10兆元バズーカ」(5年で約210兆円を地方自治体に補塡する緊急財政支出)までだ。だがそれでも、不動産の破綻は止まらない。 そのため、地域に住む富裕層や、黒字を出している企業を脅しつけて「寄付」を強要する「コワモテ自治体」も横行する始末だ。 そんな中、昨年末に山東省平陰県が始めた「奇手」が、にわかに注目を集めている。なんと「県の低空の30年間使用権」を、金宇通用航空という国有のドローン運営企業に売ったのだ。 金額は、9億2400万元(約193億円)。年間にすると、約6億4000万円だ。 すでに平陰県には、中国全土から問い合わせが殺到しているという。つまり今後、中国じゅうの「低空」が、ドローンや空飛ぶクルマの開発業者などに切り売りされていく可能性があるのだ。 それにしても、町の「空間」までビジネスにするなんて、2025年の中国は世界最先端なのか、はたまた世も末なのか。 「週刊現代」2024年1月11・18日号より ……・・ 【もっと読む】「東京」は思っていたのとまったく違う…外国人旅行者が驚愕した「日本人の姿」
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