あまりに異常…アメリカが日本を実質的に支配している現実を石破首相は変えられるのか
大きな問題そのものにコミットしない
翻って野党である。自民党が統一教会のような勢力の影響下にあり、本当に日本の国益を守るという責任が果たせるのか否か問われる状況ならば、別の政党が政権を担うようになるのが、当然の流れである。 しかし、国民が安心して政権をゆだねられるような野党は存在しない。 口先では自民党を批判するが、そこまでである。たとえば安全保障について、自民党が現在進めている日米安全保障条約にもとづく方法以外の、実効性のある政策を提言できているかと言えば、寡聞にしてそれを知らない。これは、野党・一部マスコミ・大多数の日本国民に共通する問題である。大きな問題そのものにコミットしない。「上」が何をやっているのかは知らない。しかし、結果に気に入らないところがあれば、過剰なほどに文句を言って溜飲を下げて、一瞬良い気分になる。それだけである。石破首相の服装の乱れなどを指摘して笑うようなことばかりを愛好する。 「裏金」疑惑の議員について、石破首相はその後に公認の範囲を狭くすることを決めた。そうすると今度は、味方になろうとした議員も切り捨てる悪い決断だと批判する人々がいる。大事で難しい論点はスルーして、権力者が何か動くのを待って「甘過ぎる」か「厳し過ぎる」のどちらかを言っていれば、権力者と戦っているポーズが示せるのだから、簡単なものだ。そのような安易な仕事ばかりが許容され続け、それを国民が喜んで受け入れることが続けば、どうなるだろう。それぞれの組織の人事権に介入するような権力を用いて、マスコミの発言を統制しようとする政治家が有利な状況が出現してしまうのではないかと、不安になる。
「対米従属」を現実的に改善していく姿勢
さて、石破首相のことを考えると、その場の見かけにこだわる人ではなく、一貫した信念があるのは、確かなようだ(多分、それでも見かけのことはもっと気にした方がよいのだろう)。 それを現実の政治で実践し、どのような成果を上げるか、あるいは上げないのかは、これからの実績によって判断される。 どうしても「見かけ」ばかりで、踏み込んだ理念や戦略を欠いているような政治ばかりをみせられてきた経緯があり、少し期待したい気持ちになっている。特に、日米安保にかんして、「基地協定」に関する見直しをアメリカ側に求める姿勢を見せるなど、「対米従属」と形容される状況を、現実的に改善していこうとする姿勢を好ましく思う。 現在の日米安保条約は、アメリカによる軍事戦略に日本がほぼ無条件に組み込まれる内容となってしまっている。その対米従属という前提条件に従うだけではなく、今後の日米安全保障条約の内容とアメリカの世界戦略の中に、被爆国としての日本の主張を反映させるところにまで、日本の立場をつくっていくことができるか否かは、これからのことのようだ。イスラエルとアメリカとの関係について、現在の石破首相の態度はアメリカに追従する内容のように伝えられている。しかし、それがこれからの国際環境の中で、本当に日本の国益にかなうことであるのか否かは、国民全体がよく考えて見極めていかねばならない。現状のイスラエルは批難され、何らかの制裁を受けるのに値するような行動を示してしまっているが、アメリカがそれを容認している。西洋近代の原理原則を、アメリカが損なっている。しかし一方で、日米安保条約を破棄して、BRICSに乗り換えるべきであるかのような暴論に与する気持ちは一切ない。
堀 有伸(精神科医・ほりメンタルクリニック院長)