プロスケーター羽生結弦はなぜ、「単独公演」にこだわるのか…技術で競技者を超え、規格外の表現目指す超一流の境地
■ 常に120%、「羽生結弦」ブランドへの期待を裏切らない 羽生さんがインタビューに応じてくれたのは、今年の3月11日で、前日までの3日間は自身が座長を務めた被災地でのアイスショー「羽生結弦 notte stellata 2024」が開催されていた。羽生さんはこのショーの中で毎回、3つのプログラムを滑っている。 インタビューの中で「実は3つのプログラムを滑るだけでも、めちゃくちゃしんどかったです」と打ち明けていた。常に120%で、会場の期待値を上回ることで、自らのプログラムを通したブランド価値を高めてきた羽生さんにとって、たとえ一瞬でも気を緩めることなく、高い集中力で向き合い続けなければならないからだ。 そんな中で、なぜ「単独」という高いハードルを飛び越えようとしたのか。たった一人で単独公演を行う決断を下したのか。羽生さんはインタビューの中で、初めての単独公演『プロローグ』誕生の舞台裏をこう明かしてくれた。 「プロになるときに、スケートを続けていくにあたって、『羽生結弦のスケートを見たい』と思ってくださる方々の声が、強く入ってきました。それならば、僕のスケートを見たいと思ってくださっている方に、ずーっと僕のスケートを見ていただける環境をつくれないかなと思ったのが、最初のきっかけですね」 自らのスケートを求めてくれる人たちがいるのなら、“余白”を取り除く。そのために、全てを自分で演じるという発想だった。とはいえ、単独のプレッシャーはとてつもなく大きく、体調不良によるキャンセルすら許されない。実際、羽生さんは『GIFT』のときには直前に体調不良に苦しめられたが、そんなそぶりをみじんも見せることなく、満員の会場を盛り上げた。
■ 妥協なき競技者時代よりも厳しいトレーニング 土壇場で自らを支えてくれるのは、どこまで追い込んだか、どこまで本気で打ち込んでくることができたか──という日々の中で向き合った妥協なきトレーニングと、積み重ねた努力に裏打ちされた自信しかない。 そういう意味で、羽生さんは「プロとしてやっている以上、当然かもしれませんが、競技者時代とは比べものにならないくらいのトレーニングを積んでいます」と高い負荷の中でスケートと向き合い続けている。 >>【写真13点】羽生結弦さんのプロスケーターとしての技術と表現のすごさを写真で見る スタミナ、フィジカル、敏捷性・・・、プロとしての肉体に必要な要素を高いレベルで培っていくには、相当な時間も要する。実際、羽生さんは2月19日の『RE_PRAY』横浜公演の中では「1日6時間くらいトレーニングをしています」と語っていた。 さらには、最先端のトレーニングを取り入れるどん欲な姿勢は、肉体を使ったトレーニングだけにとどまらず、数多くの英語媒体の論文を読み込むことに時間を費やすことになっているという。 (後編に続く) ■羽生結弦さん、単独インタビュー後記 (前編)プロスケーター羽生結弦はなぜ、「単独公演」にこだわるのか…技術で競技者を超え、規格外の表現目指す超一流の境地 (後編)プロスケーター羽生結弦が明かす「単独公演」の舞台裏…2時間で10近いプログラム、「一人で駅伝を走っている感覚」
田中 充