「苦手な人や嫌いな人」とあえてすべき1つのこと、同じお皿の料理をシェアするとさらに効果的
■相手の気持ちに「共感できる人」と「できない人」 他の人に対して親切な振る舞いができる人のことを、心理学では「愛他性」とか「愛他主義」という言葉で表現します。逆に、自分のことしか考えない人のことは「利己性」で「利己主義」です。 自分が損をしても、あるいは自分が犠牲になっても、他の人のために行動できる人は愛他性が高いわけですが、どうして愛他的な人はそういうことができるのでしょう。その理由は、相手の境遇を、あたかも自分のこととして認識しているからです。
苦しくて困っている人を見かけると、愛他的な人は、「他人事」ではなく、「自分のこと」として共感するのです。自分が苦しくなるのです。ですから、その苦しみを軽くしてあげたいと感じ、親切にできるのです。 ペンシルバニア大学のクリスティン・ブレセル=ハウアウィッツは、究極の愛他性を持っている人たち、すなわち、自分の腎臓を知らない人に提供した25名と、年齢が同じくらいの比較のためのグループ27名に集まってもらい、ペアでの作業をしてもらいました。
どんな作業かというと、最初の2回は、ペアになった人が痛い思いをする(右手の親指の爪を万力で締めあげて強い圧を加える)のを眺め、3回目は自分自身が同じ痛い思いをするのです。 この作業をしているときの脳の活動を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)という装置で調べてみると、愛他性の高いグループでは、自分が痛い思いをするときだけでなく、ペアの人が痛い思いをしているのを眺めているときにも、「島」と呼ばれる痛みを司る領域が活性化しました。
つまり、愛他的な人は、知らない人の痛みも、我がことのように感じるということが明らかにされたのでした。 ■相手の立場で物事を考えれば「空気」も読める 比較グループの人は、知らない人が苦しんでいるのを見ても、「ふうん、だから何?」としか感じられませんでしたが、愛他性の高い人はそういうことはできません。自分も同じ痛みを感じるのです。 人に親切にしたいのなら、いつでも相手の立場で物事を考える訓練をするといいですね。「この人は、今、どういう気持ちなのだろう?」と考えながら付き合うようにすると、少しずつではあっても、相手の気持ちに共感できるようになります。相手の表情から、うれしいのか、悲しいのか、怒っているのかなども、正確に読み取れるようになります。
「空気が読めない人」という表現がありますが、心理学的にいうと、空気が読めない人は、相手の気持ちに共感できない人であり、愛他性の低い人です。 こういう人は、普通の社会生活を送るうえでも非常に苦労をします。何しろ、他の人への気遣いができませんからね。 知らないところで、相手を傷つけたり、配慮のない言葉遣いをしたりしてものすごく嫌われます。 社会生活を送るうえで、相手の気持ちを敏感に察知できることは、だれにとっても必須の能力ですから、ぜひ相手の立場で考え、共感性を磨いてください。相手の感情を、我がことのように感じられるようになれれば完璧です。
内藤 誼人 :心理学者、立正大学客員教授、アンギルド代表取締役社長