「育休、何日取得する気なんだ?」「最近の人はいいよね。“気軽に休める制度”があって」…日本にはびこる〈休暇=悪〉という職場
【改善策】「事」と「人」、両輪のマネジメントを行う
■その人の置かれた状況や気持ちを理解すれば、感謝の気持ちも生まれる マネジメントにおいては、「事(タスク)」だけではなく、何よりも「人」が重要です。そんなことは当たり前と思うかもしれませんが、実際は、「事(タスク)」中心でマネジメントをしていることが多いのです。 「このプロジェクトを成功させるためには、誰が何をするのか」 「今期の売上目標を達成するために、誰がどれだけ売上を上げていくのか。そのために、今、何をするのか」 「今のチームに欠けている〇〇という役割を担えるのは、アナタしかいない。そのためにこの研修を受け、成長していって欲しい」 これらはすべて、「事(タスク)」中心のマネジメントです。「事(タスク)」の完遂が重要なので、人に何をやってもらうかを決めて動かしているだけです。予定外の「休み」はその計画を阻害するもの、周囲の足並みを乱すものとして歓迎されません。 一方、「人(マインド)」のマネジメントは、その人の置かれた状況や気持ちを理解することからはじまります。 【子どもが熱を出したのに、頑張って仕事をしてくれている】⇒【子どもも仕事もどっちも気がかりで、大変な思いをしているに違いない】⇒【まずは、ねぎらいの言葉をかけよう】⇒【急な発熱にも対応できるような働き方・仕組みを一緒に考えてみよう】と、対応が変化していくはずです。会社の事情によって、急には特別な対応ができなかったとしても、【大変な状況のなかで、それでもわが社で仕事をしてくれている】という感謝の気持ちを持ち、その感謝が伝われば、社員の組織への信頼感が高まるはずです。 ■今の状況は変化する。長期的な視野に立った価値に気づく 人の一生のなかで、「会社で働く」というのは、ある一部の役割でしかありません。 個人の生涯発達と職業との関係を研究したドナルド・E・スーパー氏は、人が一生涯に果たす役割は、「子ども」「学習する人」「余暇を楽しむ人」「市民」「職業人」「家庭人」などいくつもあり、それらの役割は「家庭」「学校」「地域社会」「職場」「施設」などの生活空間で演じられると考え、「ライフ-キャリア・レインボー」という概念モデルをつくりました。 さらにスーパー氏は、これらの役割は固定的なものではなく、個人によって、環境によって、その時どきの比重が変化することも示しました。人生100年時代となり、その比重の変化は個人によって大きく異なるはずです。そのような人生のなかの1つである「職場」において、さまざまな役割を担っているその人に、どのように活躍してもらうのか。1人ひとりに向き合ったマネジメントが必要になるのです。 その人が今、置かれた状況も永遠のものではなく変化します。育児や介護などがあり、今は仕事に全力でできない時間があったとしても、それがひと段落すれば、また活躍できるようになるかもしれないわけです。長期的な視野に立てば、「ここで長く働きたい」と思ってもらうことのほうが、企業と個人のWIN-WINな関係になるはずです。 私は、人も、企業も、それぞれの価値を大事にしながら、WIN-WINの関係が実現できる「人と企業の価値の交換」が重要だと考えています。どちらか一方が、自分の価値を押しつけるのではなく、互いに尊重し合い、ともにプラスになる。そのような立場に立ったマネジメントを実現して欲しいと切に願っています。 松岡 保昌 株式会社モチベーションジャパン 代表取締役社長 1963年生まれ。1986年に同志社大学経済学部卒業後、入社したリクルートで「組織心理」学び、ファーストリテイリング、ソフトバンクでトップに近いポジションで「モチベーションが自然に高まる仕組み」を実践。 現在は、経営、人事、マーケティングのコンサルティング企業である株式会社モチベーションジャパンを創業。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士、キャリアカウンセリング協会認定スーパーバイザーとして、個人のキャリア支援や企業内キャリアコンサルタントの普及にも力を入れている。著書に『人間心理を徹底的に考え抜いた「強い会社」に変わる仕組み』(日本実業出版社)がある。
松岡 保昌